流れる空の中で数学を。

とある数学好きの「手作りすうがく」と「気ままな雑記」。

2012年第二回東大オープン3を解いてみた

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2019/09/19追記:みをつくしさんが間違いを指摘してくれたので、修正しました。ありがとうございました。

2012年第二回東大オープン3

今日は本を読む気がなかなかおきなくて数学できていないので、twitterの数学をしました。

解答

まずは、式変形する。

x^2-p^n x +q^n=0
x(p^n -x)=q^n……(1.1)

このとき、

x=1,p^n-x=q^n
x=q^n,p^n-x=1
x\equiv 0,p^n-x\equiv 0 (\bmod q)

の3通りのパターンがあり得る。

①の場合

p^n-1=q^n……(2.1)

ここで、p,qの偶奇は異ならなければいけないことがわかる。q\lt pより、

q=2……(2.2)

である。また、nが偶数のとき、n=2k(k \ge 1)とおくと、

(p^k-2^k)(p^k+2^k)=1……(2.2)

となり、これを満たすpは明らかに存在しないので矛盾。nが奇数のとき、

p^n=2^n+1=(2+1)(1-2+2^2-\cdots+2^{n-1})……(2.3)

因数分解できる。ここで、n\ge 3とすると

1-2+2^2-\cdots+2^{n-1}=p^{n-1}
1-2+2^2-\cdots-2^{n-2}=p^{n-1}-2^{n-1}
-1-2^2-2^4 \cdots - 2^{n-3}……(2.4)

となるが右辺は正で、左辺は負となるので矛盾。よって、n=1

(p,q,n)=(3,2,1)……(2.5)

である。

②の場合

p^n-q^n=1……(3.1)
p,qの偶奇はことなり、p \gt qなので、q=2。従って、

p^n=2^n+1 ……(3.2)

この式は(2.3)式と同じなので、求めるp,q,nも①の場合と同じである。

③の場合

p^n\equiv 0 (\bmod q)……(4.1)

 より、p,q素数なので、

p=q……(4.2)

である。(1.1)式より、k+l=n(n-1 \ge k,l \ge 1)となる自然数によって、

x=p^k,p^n-x=p^l……(4.3)

と表せる。x=p^kを右の式に代入して、

p^n-p^k=p^l
p^k(p^{n-k}-1)=p^l……(4.4)

ここで、n-k\ge 1なので、

p^{n-k}-1\equiv -1 \not\equiv p……(4.5)

なので、p^{n-k}-1pで割り切れない。従って、

p^{n-k}-1=1
p^{n-k}=2……(4.6)

でなければいならない。よって、これを満たす(p,q,n)は、

(p,q,n)=(2,2,2)……(4.7)

求める解

以上より、求める解は、

(p,q,n)=(3,2,1),(2,2,2)……(5.1)

 のみである。

整数問題bot②の自作問題を解いてみた1

整数問題bot②の自作問題

今回もtwitterで見かけた以下の問題を解いてみた。なかなか手ごわい問題だった。

解答

問題は、

p^n-1=m^5+m^4……(1.1)

を満たす正の整数[tex;m,n]を全て求めよである。

m=1のとき、

p^n=3
\Rightarrow p=3,n=1……(1.2)

がわかる。次に、m=2のとき、

p^n=32+16+1=49より

p=7,n=2……(1.3)

がわかる。これで、解

(m,n)=(1,1),(2,2)……(1.4)

が求まった。これ以外に解のないことを示す。以後、m\ge 3として矛盾を導く。

因数分解合同式

p^n=m^5+m^4+1=(m^2+m+1)(m^3-m+1)……(2.1)

因数分解できる。m\ge 3より、

m^2+m+1\ge 13 \not= 1……(2.2)
m^3-m+1 \ge m^3+1 \ge 28 \not= 1……(2.3)

より、m^2+m+1,m^3-m+1pの冪乗であって、1でない。従って、pを法として、

m^2+m+1\equiv 0 かつ m^3-m+1\equiv 0……(2.4)

である。上の2式の差をとると、

0\equiv(m^3-m+1)-(m^2+m+1)=m(m^2-m-2)=m(m+1)(m-2)……(2.5)

因数分解できる。

場合分けと合同式

(2.5)式より、pを法として

m\equiv 0
m\equiv -1
m\equiv 2

となる。

①の場合、(2.4)式より、

1 \equiv 0 (\bmod p)……(3.1)

より、これを満たす素数pは存在しないので矛盾。

②の場合、(2.4)式より、

(-1)^2-1+1\equiv 1\equiv 0 (\bmod p)……(3.2)

より、これを満たす素数pは存在しないので矛盾。

 ③の場合(2.4)式より、

2^2+2+1=7 (\bmod p)……(3.3)

より、これを満たす素数p7である。(2.4)式より、

2^3-2+1\equiv 7 \equiv 0 (\bmod 7)……(3.4)

となるので、無矛盾である。よって、m\ge 3ならば、p=7である。

再び場合分けと合同式

(2.1),(2.2),(2.3)式より、

m^2+m+1 = 7^k (k\ge 2)……(4.1)
m^3-m+1 = 7^l (l \ge 2)……(4.2)

と表せる。そこで、法を49として、(法を7とした時と同様にして、)

m^2+m+1\equiv 0 (\bmod 49) かつ m^3-m+1\equiv 0 (\bmod 49)……(4.3)

 である。再び、差をとって、

0\equiv m(m+1)(m-2) (\bmod 49)……(4.4)

 を得る。ところで、m-2のみが7で割れたので、m-2のみが49で割れる。つまり、

m-2\equiv 0 (\bmod 49)
\Rightarrow m \equiv 2 (\bmod 49)……(4.5)

となる。ところが、(4.3)式より、法を49として、

2^2+2+1 \equiv 7 \equiv 0 (\bmod 49)……(4.6)

となり矛盾。よって、m\ge 3の解はない。

求める解

以上より、求める解は、(1.4)式より

(m,n)=(1,1),(2,2)……(5.1)

のみである。

【別解】2009ウクライナ数学オリンピックを解いてみた

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2009ウクライナ数学オリンピック

今日もtwitterで見かけた問題を解いてみた。最近、平方数にこっているので目についたのが次の問題だ。

解いてみてから気づいたが、過去にも同じ問題を解いていた。

 

sky-time-math.hatenablog.jp

 

今回は別解を見つけたので、それを紹介する。

解答

問題は、

2p^2+p+9=m^2……(0)

を満たす素数pと正の整数mを求めよである。まずは、式変形して9を右辺に移項することで、

p(2p+1)=(m-3)(m+3)……(1)

となる。p素数なので、m-3,m+3のいずれかを割る。

pm-3を割る場合

整数tによって、

m-3=pt
\Rightarrow m=3+pt……(2)

と表せる。このとき(1)式より、

p(2p+1)=pt(pt+6)
\Rightarrow 2p+1=t(pt+6)
\Rightarrow (t^2-2)p=1-6t
\therefore p=\frac{1-6t}{t^2-2}……(3)

と変形する。*1ここで、t=-sと取り直すと、

p=\frac{1+6s}{s^2-2}……(4)

を得る。これが整数になるのは、

1+6s \gt s^2 -2 または s^2-2=\pm 1……(5)

の場合である。ここで、s^2-2=1s^2=3となり、sが整数とならないので不適。s^2-2=-1のとき、

s^2=1
\Rightarrow s=\pm 1……(6)

話を戻して、(5)式のもう一方の条件は、

f(s) \equiv s^2-2 -(6s+1)=s^2-6s-3 \lt 0……(7)

と表せる。

f(6)=-3
f(7)=4
f(0)=-3
f(-1)=4

従って、(7)式または(6)式が成立するのは、

-1 \le s \le 6

である。これを満たす整数sを(3)式に代入していくと、

s=-1 \Rightarrow p=5
s=0 \Rightarrow p=-\frac{1}{2}
s=1 \Rightarrow p=-7
s=2 \Rightarrow p=\frac{13}{2}
s=3 \Rightarrow p=\frac{19}{7}
s=4 \Rightarrow p=\frac{25}{14}
s=5 \Rightarrow p=\frac{31}{23}
s=6 \Rightarrow p=\frac{37}{34}

となり求める素数p

p=5

である。このとき、(2)式より、t=1なので、

m=3+5=8

である。

pm+3を割る場合

m+3=pt
\Rightarrow m=pt-3……(8)

このとき(1)式より、①と同様にして、

p(2p+1)=pt(pt-6)
\Rightarrow 2p+1=t(pt-6)
\Rightarrow (t^2-2)p=6t+1
\therefore p=\frac{6t+1}{t^2-2}……(3)

この式は、(4)式と等価なので、

t=-1のときのみ、pが正の整数になり、

p=5

である。このとき、(8)式より、

m=-5-3=-8

となるがmは正の整数であったので不適。

求める解

よって、求める解は、

p=5,m=8

である。

 

*1:ちなみに、tの2次式と見て、判別式から攻めようとするとスタート地点にもどってしまう。

FoxQの予想の部分的証明([tex:s=2p^2,t=q^2]で[tex:p,q]が互いに素な奇素数の場合 )

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原始ピタゴラス

原始ピタゴラス数は、互いに素な自然数s,tで、偶奇が異なるものを用いて、

C=s^2+t^2,B=2st,A=s^2-t^2……(1.1)

で全て表される。今回は、s=2p^2,t=q^2,p,qは互いに素な奇素数と表されるとき、何が言えるか検証してみたので、成果を報告する。

法を4としたとき

FoxQの予想は次のものである。

A^a+B^bが平方数n^2*1になる自然数(a,b)の組は、(A,B)=(9,40)の場合を除いて高々2通りである。今回は、この予想の証明を部分的な場合について行う。

まず、

A=s^2-t-2=4p^4-q^2……(2.1)
B=2st=(2pq)^2……(2.2)

である。

n^2 \equiv (-1)^a \; (\bmod 4)
\Rightarrow aは偶数……(2.3)

が言えるので、

a=2m(m \ge 1)……(2.4)

とおく。また、

B=2\times2p^2q^2=(2pq)^2は平方数……(2.5)

である。

原子ピタゴラス数から原子ピタゴラス数へ

A^a+B^b=(A^m)^2+[(2pq)^b]^2=n^2……(3.1)

なので、A^m,(2pq)^b,nは再びピタゴラス数になっている。ここで、Wolfram Alphaによると、

\gcd(A,2pq)=1

である。*2つまり、A^m,(2pq)^bは互いに素なので、A^m,(2pq)^b,nは再び原始ピタゴラス数になっている。よって、ある偶奇の異なって互いに素な自然数の組(\alpha,\beta)が存在して、

A^m=\alpha^2-\beta^2……(3.3)
(2pq)^b=2\alpha \beta……(3.4)
n=\alpha^2+\beta^2……(3.5)

と表せる。 (3.4)より、可能な(\alpha,\beta)の組は

\alpha=2^{b-1}p^b,\beta=q^b
\alpha=2^{b-1}q^b,\beta=p^b
\alpha=p^b,\beta=2^{b-1}q^b
\alpha=q^b,\beta=2^{b-1}p^b
\alpha=2^{b-1}p^bq^b,\beta=1

の5通りである。

③の場合

法を8として、pが奇数なので

4p^4-1\equiv 3……(4.1)
p^{2b} \equiv 1……(4.2)
2^{2b-2}\equiv 1,4,0……(4.3)

が成り立つ。特に、b\ge 32^{2b-2}\equiv 0である。そこで、(4.3)の3通りの場合を括弧()で表すことにすると

3\equiv A^m=p^{2b}-2^{2b-2}q^{2b}\equiv1-(1,4,0)\equiv(0,5,1)……(4.4)

より矛盾。

④の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=q^{2b}-2^{2b-2}p^{2b}\equiv1-(1,4,0)\equiv(0,5,1)……(5.1)

より矛盾。

②の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=2^{2b-2}q^{2b}-p^{2b}\equiv(1,4,0)-1\equiv(1,3,7)……(6.1)

よって、b=2である。このとき、(2.1)(3.3)式より、

A^m=(4p^4-q^4)^m=4q^4-p^4……(6.2)

m=1は明らかに不適。m \ge 2とすると、

A^m\ge (4p^4-q^4)^2=16q^8-8p^4q^4+q^8 \gt q^8……(6.3)

 従って、(6.3)式より、q\ge 3なので、

A^m \gt q^8 \gt 4q^4 \gt 4q^4-p^4……(6.4)

となり矛盾。

⑤の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=2^{2b-2}p^{2b}q^{2b}-1\equiv(1,4,0)-1\equiv(1,3,7)……(7.1)

 よって、b=2である。このとき、(2.1)(3.3)式より、

A^m=(4p^4-q^4)^m=4p^4q^4-1……(7.2)

m=1は明らかに不適。m\ge 2とすると

A^m\ge (4p^4-q^4)^2=16p^8-8p^4q^4+q^8 \gt 16p^8+q^8……(7.3)

また、A\gt 0より、

4p^4\gt q^4……(7.4)

 従って、(7.3)(7.4)式より、

A^m \gt 16p^8+q^8 \gt 4p^4q^4+q^8 \gt 4p^4 q^4 \gt 4p^4q^4-1……(7.5)

となり矛盾。 

①の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=2^{2b-2}p^{2b}-q^{2b}\equiv(1,4,0)-1\equiv(1,3,7)……(8.1)

 よって、b=2である。このとき、(2.1)(3.3)式より、

A^m=(4p^4-q^4)^m=4p^4-1……(8.2)

よって、

m=1……(8.3)

のとき明らかに成立。よって、m=1は求める解の1つである。m \ge 2とすると、

A^m\ge (4p^4-q^4)^2=16p^8-8p^4q^4+q^8 \gt 16p^8+q^8……(8.4)

 従って、(8.4)式より、q\ge 3なので、

A^m \gt 16p^8+q^8 \gt q^8 \gt 4q^4 \gt 4p^4-q^4……(8.5)

となり矛盾。 

求まった解

以上より、互いに素で偶奇が異なるs=2p^2,t=q^2から生成される原子ピタゴラスA,Bに対して、

A^a+B^bが平方数n^2になる自然数(a,b)の組は、(2.4)(8.3)式より、

(a,b)=(2,2)のみである。

今回も解は(a,b)=(2,2)のみとなったので、次回は(a,b)=(2,2)以外に解の出てくる場合を調べたいと思います。

*1:nは明らかに奇数である。

*2:ユークリッドの互除法がうまくできませんでした。やり方をわかった方がいたらどうか教えてください。

FoxQの予想の部分的証明([tex:s=2p^2,t=1]で[tex:p]が奇素数の場合 )

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原始ピタゴラス

原始ピタゴラス数は、互いに素な自然数s,tで、偶奇が異なるものを用いて、

C=s^2+t^2,B=2st,A=s^2-t^2……(1.1)

で全て表される。今回は、s=2p^2,pは奇素数t=1と表されるとき、何が言えるか検証してみたので、成果を報告する。

法を4としたとき

FoxQの予想は次のものである。

A^a+B^bが平方数n^2*1になる自然数(a,b)の組は、(A,B)=(9,40)の場合を除いて高々2通りである。今回は、この予想の証明を部分的な場合について行う。

まず、

A=s^2-t-2=4p^4-1……(2.1)
B=2st=(2p)^2……(2.2)

である。

n^2 \equiv (-1)^a \; (\bmod 4)
\Rightarrow aは偶数……(2.3)

が言えるので、

a=2m(m \ge 1)……(2.4)

とおく。また、

B=2\times2p^2=(2p)^2は平方数……(2.5)

である。

原子ピタゴラス数から原子ピタゴラス数へ

A^a+B^b=(A^m)^2+((2p)^b)^2=n^2……(3.1)

なので、A^m,(2p)^b,nは再びピタゴラス数になっている。ここで、ユークリッドの互除法により、

A=4p^4-1=2p(2p^3-1)+(2p-1)
2p=(2p-1)+1……(3.2)

となるので、\gcd(A,2p)=1。つまり、A^m,(2p)^bは互いに素なので、A^m,(2p)^b,nは再び原始ピタゴラス数になっている。よって、ある偶奇の異なって互いに素な自然数の組(\alpha,\beta)が存在して、

A^m=\alpha^2-\beta^2……(3.3)
(2p)^b=2\alpha \beta……(3.4)
n=\alpha^2+\beta^2……(3.5)

と表せる。 (3.4)より、可能な(\alpha,\beta)の組は

\alpha=p^b,\beta=2^{b-1}
\alpha=2^{b-1}p^b,\beta=1

の2通りである。

①の場合

法を8として、pが奇数のとき

4p^4-1\equiv 3……(4.1)
p^{2b} \equiv 1……(4.2)
2^{2b-2}\equiv 1,4,0……(4.3)

が成り立つ。特に、b\ge 32^{2b-2}\equiv 0である。そこで、(4.3)の3通りの場合を括弧()で表すことにすると、

3\equiv A^m=p^{2b}-2^{2b-2}
       \equiv 1+(1,4,0)
       \equiv (2,5,1)……(4.4)

で矛盾。よって、①は成り立たない。

②の場合

3\equiv A^m=2^{2b-2}p^{2b}-1
       \equiv (1,4,0)-1
       \equiv (0,3,7)……(5.1)

よって、

b=2……(5.2)

の場合のみ成立する。b=2のとき、

A^m=2^{2b-2}p^{2b}-1=4p^4-1……(5.3)

 ところで、(2.1)式より、

(4p^4-1)^m=4p^4-1……(5.4)

となるので、明らかに解は、m=1のみである。以上から、(2.4),(5.2)式から、求める解は、全ての奇素数pに対して

(a,b)=(2,2)

のみである。

*1:nは明らかに奇数である。

【FoxQの予想の検証】「原子ピタゴラス数の冪乗和が平方数になるか?」問題

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原子ピタゴラス数の冪乗和が平方数になるか?

原始ピタゴラス数は、互いに素な自然数s,tで、偶奇が異なるものを用いて、

C=s^2+t^2,B=2st,A=s^2-t^2

で全て表される。前回の記事で、

原始ピタゴラス数の内、小さい2つをA,Bとする。このとき、A^a+B^bが平方数になるような自然数(a,b)を求めよという問題を考えれば、(a,b)=(2,2)以外の解を持つのは、(A,B)=(9,40)に限る。

というFoxQの予想をたてた。
今回の記事では、この予想をより大きなピタゴラス数に対してチェックしていく。

C\le 2\times10^6までの原始ピタゴラス数のチェック

今回はpythonによる数値計算*1で、s,t\le1000の場合について、指数1 \le a,b \le 20の全ての組について調べた。なお、プログラムは以下にて公開している。

github.com

以下が、その結果である。計算の進捗状況を確認するため、sの値を10ごとに出力している。解(a,b)=(2,2)以外を持つA,B、その解の組(a,b)*2、解の個数の順に出力している。最後に、解(a,b)=(2,2)以外を持つA,Bのリストを出力している。

gist84b6566a8d532ed26c56fa3b53da08e8

 

予想に反して、解(a,b)=(2,2)以外を持つA,Bは多く見つかった。FoxQの予想の反例が多く得られたのである。ところが、計算結果をよくよく見てみると、(A,B)=(9,40)を除き、解の個数が2つになっているという驚くべき性質が発見された。

新FoxQの予想

そこで、予想を新たに次のように変更する。

原始ピタゴラス数の内、小さい2つをA,Bとする。このとき、A^a+B^bが平方数になるような自然数(a,b)を求めよという問題を考えれば、(a,b)が解を3個以上持つのは、(A,B)=(9,40)の場合に限る。それ以外の場合の解はたかだか2個である。

この予想が正しいかどうかはまだわからないが、プロまたはアマチュアの数学者の証明を期待して待っている。最後に、C\le 2\times 10^81 \le a,b \le 10で計算した結果を載せておく。*3計算の進捗状況を確認するため、sの値を100ごとに出力している。それ以外の出力に関しては上のプログラムと同様である。

gist1f305e2c5abc78b7f3fda7ca37aeab46

この結果は、新しい予想が成り立つことを支持している。

 

 

*1:python入門勢なので、多少プログラムが冗長であるが、そこは勘弁願いたい。

*2:(a,b)=(0,0)が出ているのは仕様です。

*3:ノートPCで、2時間以上かかった計算である。

原始ピタゴラス数の冪乗和が平方数になるのは?

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FoxQからの出題第2回

事の始まりは、以下の私が作った問題である。

 これは、原子ピタゴラス数の3つ組の内、小さい2数をとってきて一般の冪乗和をとったとき平方数になるのはどんなときかという問題である。こちらは、@tyamada1093先生によって解かれた。

 

一方、次の問題も私が作った問題である。

 こちらは、解けないと思っていたが、@tyamada1093先生と@RiemannZeta2357氏によって、ものすごい力技で解かれてしまった。

@tyamada1093先生の解答は以下のものです。

 今回は、以上の問題を一般化した場合に何が起こるか数値計算で調べたので報告する。

30個の原子ピタゴラスの3つ組と対応する問題の解

原子ピタゴラス数の3つ組(A,B,C)とは、

C^2=A^2+B^2

を満たす互いに素な自然数の組(A,B,C)のことである。このとき、私が考えた問題の一般化は、

A^a+B^b

が平方数になる0以上の整数の組a,bを全て求めよ。』

である。今回数値計算に用いる原子ピタゴラス数は以下のサイトのものから最初の30組を使わせていただきました。

兵庫県立明石北高等学校天文研究部のピタゴラス数一覧表

https://www.hyogo-c.ed.jp/~meihoku-hs/club/astronomy-py.html

簡単のため、以下、Bを偶数とします。

[tex:]=(C,A,B)に対して、解(a,b)を原子ピタゴラス数の公式

C=s^2+t^2,B=2st,A=s^2-t^2

に現れる組s,tと合わせて、以下に書きます。

 (C,A,B),(s,t)\Rightarrow (a,b)の解

の形式で書いていきます。なお、今回の結果は、0 \le a,b \le 100となる指数の範囲でpythonで調べたものである。

(5,3,4),(2,1)\Rightarrow (1,0),(2,2) 
(13,5,12),(3,2)\Rightarrow (2,2)
(17,15,8),(4,1)\Rightarrow (1,0),(0,1),(2,2)
(25,7,24),(4,3)\Rightarrow (0,1),(2,2)
(29,21,20),(5,2)\Rightarrow (2,2)
(37,35,12),(6,1)\Rightarrow (1,0),(2,2)
(41,9,40),(5,4)\Rightarrow (1,1),(1,3),(2,1),(2,2)
(53,45,28),(7,2)\Rightarrow (2,2)
(61,11,60),(6,5)\Rightarrow (2,2)
(65,33,56),(7,4)\Rightarrow (2,2)
(73,55,48),(8,3)\Rightarrow (0,1),(2,2)
(85,77,36),(9,2)\Rightarrow (2,2)
(85,13,84),(7,6)\Rightarrow (2,2)
(89,39,80),(8,5)\Rightarrow (0,1),(2,2)
(97,65,72),(9,4)\Rightarrow (2,2)
(101,99,20),(10,1)\Rightarrow (1,0),(2,2)
(109,91,60),(10,3)\Rightarrow (2,2)
(113,15,112),(8,7)\Rightarrow (1,0),(2,2)
(125,117,44),(11,2)\Rightarrow (2,2)
(137,105,88),(11,4)\Rightarrow (2,2)
(145,143,24),(12,1)\Rightarrow (0,1),(1,0),(2,2)
(145,17,144),(9,8)\Rightarrow (2,2)
(149,51,140),(10,7)\Rightarrow (2,2)
(157,85,132),(11,6)\Rightarrow (2,2)
(169,119,120),(12,5)\Rightarrow (0,1),(2,2)
(173,165,52),(13,2)\Rightarrow (2,2)
(181,19,180),(10,9)\Rightarrow (2,2)
(185,153,104),(13,4)\Rightarrow (2,2)
(185,57,176),(11,8)\Rightarrow (2,2)
(193,95,168),(12,7)\Rightarrow (0,1),(2,2)

結果と観察

解の個数については、(s,t)から特に推察できることはできなかった。ただし、

(41,9,40),(5,4)\Rightarrow (1,1),(1,3),(2,1),(2,2)

だけが解を4つも持つことは特筆に値する。更に、問題を正の整数(a,b)に限れば、(41,9,40)以外の解は全て、(a,b)=(2,2)となるという驚くべき結果を得た。つまり、なんらかの理由で、(41,9,40)だけが(a,b)=(2,2)以外の解を3つも持つのであうる。もちろん、全てのピタゴラス数について調べた訳ではないし、全ての範囲の(a,b)について調べたわけではないから、これは予想に過ぎない。つまり、FoxQの予想として、

原子ピタゴラス数の3つ組の内、小さい2つをA,Bとしたとき、

A^a+B^b

が平方数となる正の整数の組(a,b)を全て求めよという問題を考えると、(a,b)=(2,2)以外の解を持つのは、(A,B)=(9,40)のみである。

が言えそうだ。