2007カザフスタン数学オリンピックを解いてみた
2007カザフスタン数学オリンピック
昨日の夜に見かけて、気になっていた問題だったので、今日解きました。
素数の組(p,q,r)であって, p(p+1)+q(q+1)=r(r+1)を満たすようなものを全て求めよ.(2007 カザフスタン数学オリンピック)
— 整数問題bot② (@handmade_math) September 21, 2019
解答
との場合に分けて解く。
の場合
として一般性を失わない。まずは式変形をして、で割れる形に持っていきます。
……(1.1)
が素数なので、法をとして
……(1.2)
または
……(1.3)
が成り立つ。(1.2)の場合、(1.1)式より明らかに、なので、
……(1.4)
と表せる。この式を(1.1)式に代入して整理すると、
……(1.5)
となるが左辺は正なので矛盾。同様にして、(1.1)式をとの役割を入れ替えて変形すると、
……(1.6)
となり、
法をとして
……(1.7)
または
……(1.8)
が成り立つ。(1.7)式は、(1.2)式の場合と全く同様にして矛盾が導けるので、(1.3)かつ(1.8)が成り立つ。従って、改めてを自然数として
……(1.9)
……(1.10)
と表せる。(1.9)式から(1.10)式を引くと、
……(1.11)
ここで仮定より、であったので、とおくと、
……(1.12)
となる。*1これを(1.9)式に代入して、
……(1.13)
これを(1.1)式に代入して、整理すると、
……(1.14)
のとき、で(1.14)式はとなり矛盾するので、であり、両辺をで割れる。としていたことを思い出すと不等式による評価を得る。
……(1.15)
最後の行でを定義した。のとき、
……(1.16)
より、(1.15)の不等式を満たす素数は、であったことを思い出すと、
……(1.17)
のみである。このとき、(1.13)(1.15)より、
……(1.18)
となり、は素数でないので矛盾。のとき、(1.15)の不等式を満たす素数の範囲はの場合に比べて明らかに狭くなる。よって、の場合に解は存在しない。
の場合
(1.1)式より、
……(2.1)
これより、
……(2.2)
または
……(2.3)
が成り立つ。のとき、
……(2.4)
となり、が素数であるので矛盾。のとき、(2.1)式より、
……(2.5)
従って、法をとして、
……(2.6)
または
……(2.7)
が成り立つ。(2.6)の場合、改めて
……(2.8)
と表せるので、これを(2.5)式に代入すると、
……(2.9)
ここで、は整数なのでより、両辺がで割れて、
……(2.10)
を得る。ところが、
……(2.11)
となり、が素数であったことに矛盾する。よって、(2.7)式が可能性として残る。このとき、
……(2.12)
と表せるので、先程と同様にして、
……(2.13)
ここで、仮定より、であったことを思い出すと、
(2.1)式より、
……(2.14)
より、が解となる。また、のとき、(2.13)式は、
……(2.15)
となるので、これ以外の解は存在しない。よって、求める解は、
である。
*1:とおくと、(1.11)式はとなり、が互いに素なので、が言え、(1.12)式が従う。
2002ギリシャ数学オリンピックを解いてみた。
2002ギリシャ数学オリンピック
昼ごはん後の休憩として、解いてみた。
x≦y≦zを満たす正の整数の組(x,y,z)であって, xy+yz+zx-xyz=2を満たすようなものを全て求めよ.(2002 ギリシャ数学オリンピック)
— 整数問題bot② (@handmade_math) September 21, 2019
解答
問題は、
……(1)
である。のとき、
……(2)
より、が正の整数なので、求める解の1組は
……(3)
となる。のとき、
……(4)
従って、のいずれかは偶数である。が偶数であるとして、とおくと、
……(5)
となるが、これは、であったので、となり、矛盾。従って、が偶数であるので、これを改めてとおくと、
……(6)
ここで、ならば、(6)式はを導くので矛盾。従って、なので、(6)式の両辺をで割って、
……(7)
隣り合う2数は互いに素なので、が整数となるためには、
……(8)
でなくてはならない。このとき、より、求める解の1つは、
……(9)
である。以後、とする。さて、(1)式に戻ると、
……(13)
と変形できるので、が0になる場合と、そうでない場合に分けて解く。のとき、
……(14)
ここで、隣り合う2数は互いに素なので、は互いに素となり、は自然数にならない。よって、矛盾。したがって、(13)式の両辺は、で割れて、
……(15)
となる。より、
……(16)
を得るので、これを整理して、
……(17)
ところが、であったので、
……(18)
となり、(17)(18)式は矛盾している。従って、の解はなく、求める解は、
……(19)
のみである。
【第3回】FoxQからの出題3【2019/09/10出題】
FoxQからの出題第3回
今回出題したのは以下の問題です。メルセンヌ数が途中で出てくるのがおしゃれポイントです。
[FoxQからの出題3]
— FoxQ@固定ツイはFoxQからの出題3 (@foxq_stm) September 10, 2019
(p^2-4p-2)^6=416p^n+(-36p-1)^n
を満たす自然数nと素数pの組を(全て)求めよ。 pic.twitter.com/Ux2nUXvI0M
今回の正答者はイナバノクロウサギ (@kunne_isepo)さんでした。おめでとうございます!
mod pで両辺比較して2^6-(-1)^n≡0より
— イナバノクロウサギ (@kunne_isepo) September 19, 2019
n:奇数のとき、p=5,13
右辺がnの減少関数になることから有限個チェックして解なし。
n:偶数のとき、p=3,7
右辺がnの増加関数になることから有限個チェックしてp=3でn=2。
以上より(n,p)=(2,3)。 https://t.co/w53IsEzLNK
詳細な解答例
問題は、
……(1)
である。まず、とすると、(1)式は偶数=偶数+奇数となって矛盾。よって、は奇素数、このとき、
なので、法をとして(1)式は、
となる。よって、は偶数である。
次に法をとして(1)式を見ると、
従って、
のいずれかである。
の場合
である。のとき、法をとして
より矛盾。よって、
より、
となる。したがって、(1)式
は成り立たず矛盾。
の場合
である。のとき、法をとして
で、無矛盾。よって、の場合を調べると、
より、
が成立する。(1)式はの狭義単調増加関数なので、で(1)式を満たすは存在しない。よって、求める解は、
である。
ディオファントス近似のプログラムを書いてみた【tan1°を有理数で近似する試み】
Amazon.co.jp: Yoshiki Ueoka:作品一覧、著者略歴
ディオファントス近似
ディオファントス近似とは、ざっくり言うと無理数を有理数で近似する方法である。*1
例えば、円周率については、
等がある。
プログラム
プログラムを書くにあたって、はじめての数論31章と下記のサイトを参考にしました。ありがとうございます。
作成したプログラムは下記にて公開しているので、改変自由でご自由にお使いください。
使い方はalphaに近似したい無理数を代入し、Nの値をいろいろと変えていくと、既約分数による近似が得られます。Nの値が大きい程、精度は良くなりますが計算時間がかかります。
いくつかの例
今回のプログラムで計算した例をいくつか紹介する。以下は、で計算した結果である。*2なるべく精度の高い方から順に書いておく。
円周率の例も再現できた。
ここからは、未知の領域へ。まずは、ネイピア数。
無理数*3も敢えて有理数で近似してみた。で近似できたのは驚きだった。
最後に、と、
こんな感じに、いろんな無理数を近似することができます。みなさんも暇でやることがない時は、このプログラムを使って、いろんな無理数を有理数で近似して遊んでみてください。それでは。
2012年第二回東大オープン3を解いてみた
2019/09/19追記:みをつくしさんが間違いを指摘してくれたので、修正しました。ありがとうございました。
2012年第二回東大オープン3
今日は本を読む気がなかなかおきなくて数学できていないので、twitterの数学をしました。
[53]p,qを素数、nを正の整数とする。xの方程式
— 整数問題bot (@seisu_bot) September 16, 2019
x²-pⁿx+qⁿ=0
が整数解を持つとき、(p,q,n)の組を全て求めよ(2012年第二回東大オープン3、易)
解答
まずは、式変形する。
……(1.1)
このとき、
①
②
③
の3通りのパターンがあり得る。
①の場合
……(2.1)
ここで、の偶奇は異ならなければいけないことがわかる。より、
……(2.2)
である。また、が偶数のとき、とおくと、
……(2.2)
となり、これを満たすは明らかに存在しないので矛盾。が奇数のとき、
……(2.3)
と因数分解できる。ここで、とすると
……(2.4)
となるが右辺は正で、左辺は負となるので矛盾。よって、で
……(2.5)
である。
②の場合
……(3.1)
の偶奇はことなり、なので、。従って、
……(3.2)
この式は(2.3)式と同じなので、求めるも①の場合と同じである。
③の場合
……(4.1)
より、は素数なので、
……(4.2)
である。(1.1)式より、となる自然数によって、
……(4.3)
と表せる。を右の式に代入して、
……(4.4)
ここで、なので、
……(4.5)
なので、はで割り切れない。従って、
……(4.6)
でなければいならない。よって、これを満たすは、
……(4.7)
求める解
以上より、求める解は、
……(5.1)
のみである。
整数問題bot②の自作問題を解いてみた1
整数問題bot②の自作問題
今回もtwitterで見かけた以下の問題を解いてみた。なかなか手ごわい問題だった。
p^n-1=m^5+m^4を満たす素数p,および正の整数m,nを全て求めよ.(自作)
— 整数問題bot② (@handmade_math) September 12, 2019
解答
問題は、
……(1.1)
を満たす正の整数[tex;m,n]を全て求めよである。
のとき、
……(1.2)
がわかる。次に、のとき、
より
……(1.3)
がわかる。これで、解
……(1.4)
が求まった。これ以外に解のないことを示す。以後、として矛盾を導く。
因数分解と合同式
……(2.1)
と因数分解できる。より、
……(2.2)
……(2.3)
より、はの冪乗であって、でない。従って、を法として、
かつ ……(2.4)
である。上の2式の差をとると、
……(2.5)
と因数分解できる。
場合分けと合同式
(2.5)式より、を法として
①
②
③
となる。
①の場合、(2.4)式より、
……(3.1)
より、これを満たす素数は存在しないので矛盾。
②の場合、(2.4)式より、
……(3.2)
より、これを満たす素数は存在しないので矛盾。
③の場合(2.4)式より、
……(3.3)
より、これを満たす素数はである。(2.4)式より、
……(3.4)
となるので、無矛盾である。よって、ならば、である。
再び場合分けと合同式
(2.1),(2.2),(2.3)式より、
……(4.1)
……(4.2)
と表せる。そこで、法を49として、(法を7とした時と同様にして、)
かつ ……(4.3)
である。再び、差をとって、
……(4.4)
を得る。ところで、のみがで割れたので、のみがで割れる。つまり、
……(4.5)
となる。ところが、(4.3)式より、法を49として、
……(4.6)
となり矛盾。よって、の解はない。
求める解
以上より、求める解は、(1.4)式より
……(5.1)
のみである。
【別解】2009ウクライナ数学オリンピックを解いてみた
2009ウクライナ数学オリンピック
今日もtwitterで見かけた問題を解いてみた。最近、平方数にこっているので目についたのが次の問題だ。
素数pと正の整数mであって,2p^2+p+9=m^2を満たすようなものを全て求めよ.(2009 ウクライナ数学オリンピック)
— 整数問題bot② (@handmade_math) September 10, 2019
解いてみてから気づいたが、過去にも同じ問題を解いていた。
今回は別解を見つけたので、それを紹介する。
解答
問題は、
……(0)
を満たす素数と正の整数を求めよである。まずは、式変形して9を右辺に移項することで、
……(1)
となる。は素数なので、のいずれかを割る。
①がを割る場合
整数によって、
……(2)
と表せる。このとき(1)式より、
……(3)
と変形する。*1ここで、と取り直すと、
……(4)
を得る。これが整数になるのは、
または ……(5)
の場合である。ここで、はとなり、が整数とならないので不適。のとき、
……(6)
話を戻して、(5)式のもう一方の条件は、
……(7)
と表せる。
従って、(7)式または(6)式が成立するのは、
である。これを満たす整数を(3)式に代入していくと、
となり求める素数は
である。このとき、(2)式より、なので、
である。
②がを割る場合
……(8)
このとき(1)式より、①と同様にして、
……(3)
この式は、(4)式と等価なので、
のときのみ、が正の整数になり、
である。このとき、(8)式より、
となるがは正の整数であったので不適。
求める解
よって、求める解は、
である。
*1:ちなみに、の2次式と見て、判別式から攻めようとするとスタート地点にもどってしまう。