【臨界点の高精度見積もり】局在アンダーソンモデルのζ関数を近似的に試験的に構成してみた
局在アンダーソンモデル(Orthogonal class)
ここで、は互いに独立な確率変数で、の範囲で一様に分布する。は最近接の格子点のみにわたる和を表す。
この記事では、次元立方格子を取り扱う。
エネルギー準位統計
アンダーソンモデルのハミルトニアンを対角化して、エネルギーを得る。
各乱数のサンプル事に、エネルギーをとしたとき、そのエネルギー準位の差を
で計算する。ここで、の平均値をとしたとき、
とすると、こののとる値の分布は局在状態で、指数分布、広がった状態で広がった分布、臨界点で系のサイズに依存しない分布が得られる。
臨界点での分布をパデ近似で近似した関数はで、
ζ関数とオイラー積
得られたエネルギー順位間隔の分布関数から逆に、エネルギー順位間隔を生成する。今回は200個生成した。
このような生成方法を取るので、臨界状態以外は無限系の性質をとらえられていると考えられる。
得られた順位間隔に対して、
とオイラー積を定義する。本当は無限個の項をかけないと意味がないので、テイラー展開とパデ近似を使って、近似してみることにする即ち、
これを展開して、パデ近似する。今回は対角パデ近似を用いた。
そして、得られた近似ζ関数の零点と極を調べてみた。
極は、相の状態に寄らず円形に分布することが分かった。
零点は、局在状態では、下図のように、広がった状態では円形に分布するものが見つかる。また、局在状態では2つの領域に分断される。臨界状態では、サンプル事に、局在か広がった状態かの2つの状態になったりならなかったりする。特に、中間的な零点分布を取ることがある。
結論
零点のつながり方というトポロジカルな情報をランダムなサンプル毎に見ていくことで、臨界点が程度であることが分かった。このように有効数字4桁~5桁程度の精度で判別できるのがこの手法の強みである。
一方で、この手法の弱みは、つながっているかどうかの判断を人の目で見て判断しているという曖昧さが残っているという点と、サンプル数が十分とれているかという問題がつきまとう点である。しかし、サンプル数をより多く取れば、臨界点のより精度の高い見積もりが可能になると考えられる。