流れる空の中で数学を。

とある数学好きの「手作りすうがく」と「気ままな雑記」。

【viXra one掲載済み】アンダーソン転移の新理論を発表しました【JPSJへの不満など】

JPSJに投稿した論文が以下の理由でrejectされました

掲載拒否理由は、今回ちゃんと説明してくれたので、(ひどく誤解されてはいるが)まだ前回よりはマシかなというお気持ち。
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Manuscript Number: 70573
Section: Full Papers
Title: A method for studying the Anderson transition in the orthogonal symmetry class employing a random walk expansion, the statistics of asymptotic walks and summation method
Authors: Yoshiki Ueoka
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Editor's comments:

本論文はアンダーソン転移の臨界指数を求める新たな方法として、グリーン関数を経路展開して、それれを適当な近似のもとで数値的に評価し、その振る舞いから局在長および臨界指数を評価したと主張している。ただ、数値結果で、臨界点を与えるWの値が負になっていたり、誤差も大きかったりしている。現在は、臨界指数は高精度で求められており、本論文の精度では、新しい知見が見えてこない。
 また。アンダーソン転移のこれまでの研究を踏まえての本研究の位置付け、適切な論文の引用、次々と導入される近似の正当性、得られた数値計算結果の妥当性に関する考察、式変形や論理の流れのわかりやすさ、といったものが欠如している。
 以上、形式的な面、解析の丁寧さの両方に問題があり、JPSJの掲載にふさわしくない。
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Manuscript Number: 17894
Section: Letters
Title: zeta-Pad'e SRWS theory with high dimensional approximation
Authors: Yoshiki Ueoka
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Editor's comments:

本投稿論文は、アンダーソン転移の臨界指数に関する理論的な論文である。グリーン関数の経路展開のうちで、主要と思われる項の形を仮定し、その漸近系から局在長を求め、d次元のアンダーソン転移における局在長の臨界指数に対する解析的な表式を得たと主張している。得られた表式自体は無限次元で0.5になり、2 ~6次元で現在知られている臨界指数とそう遠くない値を示しているが、それに至る近似の正当性に関しては、ほとんど触れられていない。数値計算とのずれもそれなりにあり、パデ近似をしており、「この結果が単なる偶然で、アンダーソン転移とは関係ないのではないか」という懸念を排除する議論が不可欠である。

また、アンダーソン局在のこれまでの研究における本研究の位置付け、記号の定義や物理的意味、適切な文献の引用、所属の書き方、論理の流れを明確にする説明といったものが明らかに不足している

full paperで投稿された論文(こちらは展開を数値的に活用して臨界指数をもとめている)と、基本的な思想は共通しており、まとめることも考えられるが
いずれにしても、導入された近似の正当性を示すことが不可欠である。
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1つ目の論文で伝えたかったことと不満

まず、僕の新理論による臨界指数の精度問題であるが、これは全く持って見当違いのいちゃもんである。以下の文である。

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ただ、数値結果で、臨界点を与えるWの値が負になっていたり、誤差も大きかったりしている。現在は、臨界指数は高精度で求められており、本論文の精度では、新しい知見が見えてこない。

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なぜなら、僕は新理論のたたき台を出すことを目的としており、臨界現象の本質的な理解の進展を目的としているからだ。つまり、臨界指数を求めることは目的ではなく、手段にすぎない。そのため、臨界指数は結論ではなく、理論の正当性を評価するためのものさしに(いったん)なりさがっているのだ。

 

次の指摘について、

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 また。アンダーソン転移のこれまでの研究を踏まえての本研究の位置付け、適切な論文の引用、次々と導入される近似の正当性、得られた数値計算結果の妥当性に関する考察、式変形や論理の流れのわかりやすさ、といったものが欠如している。
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位置づけや論文の引用は、独立研究者であるため、過去に引用した文献の内、内容を覚えているものしか引用できなかったのだ。これは金銭的な問題である。また、近似の正当性や計算結果の妥当性については、上に書いた通り、臨界指数が先行研究とほぼコンシステントになっていることで説明がついているというスタンスなので、議論が逆なのである。

 

2つ目の論文で伝えたかったことと不満

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得られた表式自体は無限次元で0.5になり、2 ~6次元で現在知られている臨界指数とそう遠くない値を示しているが、それに至る近似の正当性に関しては、ほとんど触れられていない。

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何度も言うが臨界指数の高精度計算の時代は一度終わりにして、次のステップに進むべきである。そのため、臨界指数の値は、おおよそあっていれば問題ないのである。

 

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数値計算とのずれもそれなりにあり、パデ近似をしており、「この結果が単なる偶然で、アンダーソン転移とは関係ないのではないか」という懸念を排除する議論が不可欠である。

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パデ近似をすることで、臨界指数の評価に不安が残るなら、なぜボレル・パデ解析を用いた僕の以前の論文を掲載許可したのかと問いただしたい。


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また、アンダーソン局在のこれまでの研究における本研究の位置付け、記号の定義や物理的意味、適切な文献の引用、所属の書き方、論理の流れを明確にする説明といったものが明らかに不足している

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お金の問題により、避けがたいことをいわれても……

所属の書き方なんてのは特にひどい。僕は独立研究者なので、independent以外書きようがないではないか。一体どう直せと?

 

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いずれにしても、導入された近似の正当性を示すことが不可欠である。

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臨界指数の先行研究との比較で正当性は既に示している。これは、従来型の研究では認められないことだ。しかし、臨界現象の新しい知見を得るにあたっては、ここの論理は逆に用いてもよいということに気付いてほしい。

 

viXraにあげた論文

うつ病で集中力の続かない中、苦労してなんとか論文の形にもっていったもの二本である。ここにリンクを貼っておく。

vixra.org

vixra.org

 

最後にいいたいこと

臨界現象の研究が臨界指数を求めて終わりなら、そんなにつまらないことはない。その値にどのような数学的物理学的意味付けができるかは最低限必要である。

また、臨界指数の高精度計算の時代はもう終わりにしていいと思う。アンダーソン転移では、有効数字4桁程度までの精度で数値計算されており、これ以上は無用の長物である。

これからの臨界現象の研究に必要なことは、臨界指数のその先にあるものを見出すことである。

 

この点においては、僕の研究では臨界指数とリーマンのζ関数を関連付けることで、数論的意味を見出すことに成功している。また、統計力学の分配関数のアナロジーとしても、アンダーソン転移(Orthogonalクラス)ではレルヒ超越関数が対応するという綺麗な結果を得ている。

 

これが、ただ臨界指数の数値を精度よく求めるだけの研究より一歩先に踏み出しているのは明らかである。

一本目の論文は、理論構築のたたき台兼先行研究との比較による正当性の確認。

二本目の論文は、新理論がもたらす新しい知見と今後の方向性を説明している。

 

これが理解されないようでは、臨界現象の研究も所詮臨界指数止まりである。後は歴史が解決してくれるか本当に物事の本質を見極める力のある人が現れるのを願うばかりである。