【初めての数学書】多点総和法入門が出版されました!!【Kindle】
僕の初めての数学書が出版されました!!
多点総和法入門 高校生でもわかる!!ココと無限のかなたをつなぐ現代応用数学: テイラー展開から微分方程式の応用まで | 上岡 良季 | 数学 | Kindleストア | Amazon
内容は、まず中・高数学の復習から始まり、大学数学への入門(テイラー展開、パデ近似)を丁寧に新しい視点で説明します。そしてそれらを更に発展させた現代的な応用数学である、2点パデ近似から多点総和法へと話は進みます!!
2点パデ近似を用いた、各種特殊関数の近似や、微分方程式の近似解法やリーマンζ関数の非自明な零点の近似的見積もりへの応用もあります!!
ぜひ、ご一読を!!
【その2】特異点のある関数の2点漸近展開に対する総和法【多項式型】
Amazon.co.jp: Yoshiki Ueoka:作品一覧、著者略歴
特異点
この記事は前回の2点パデ近似の続きである。今回の記事では特異点の取り扱い方について説明する。
特異点は、もしあれば、関数の振る舞いを大きく特徴づける重要な情報である。そこで、今回は関数が自然数のべきの孤立特異点*1を持つ場合、すなわち、
となる場合を考える。このとき、
は、を除いて特異点を持たないので、
の漸近展開を
と計算する。ここで、パデ近似を適用するために多項式型の因子を引き出して、
とすると、は以外で、特異点を持たない。
に対する2点パデ近似をとすると、の特異点を考慮した2点パデ近似は、
となる。ここで、は、各特異点での発散のスピードを再現するように決定する。
詳しくは、拙著、多点総和法入門を読んでいただきたい。
実際の例
それでは、前回の記事で2点パデ近似を適用した関数に対して、
その特異点、
を取り入れた2点パデ近似*2を実際にやってみよう。まず、関数の2点での漸近展開は
ここで、 特異点の因子を除いてでの項を分離すると、
となるので、2点パデ近似はパデ近似を第二項に適用して、
となる。これは、次の漸近展開を持つ。
これを用いて、特異点を取り入れた2点パデ近似は、
となる。この関数は次の漸近展開を持つ。
ここで、注意しなければいけないのは、
となり特異点の振る舞いを完全には取り入れきれないことである。ただ、で係数に近い値で発散することのみ記述されている。
それでは、特異点を取り入れた2点パデ近似をプロットしたものを見てみよう。
【その1】2点漸近展開に対する総和法【多項式型】
Amazon.co.jp: Yoshiki Ueoka:作品一覧、著者略歴
2点での漸近展開
この記事に続く一連の記事で、ある実関数のとでの漸近展開がそれぞれ得られた時の総和法を紹介する。すなわち、
という漸近展開が与えられた時、与えられた情報の範囲でこれを再現するような簡単な関数を見つけることを目的とする。この手法は、僕が博士論文を書く時に開発した手法をより簡単にしたものや一般化したものにあたる。基本的な発想は今回の記事を読んでもらえればわかると思うが、今後このシリーズを通して、様々な応用が可能な有用な手法であることをお見せしたい。
詳しくは、拙著、多点総和法入門を読んでいただきたい。
2点パデ近似
今回紹介する最も簡単な方法を、「2点パデ近似」と名づけることにする。今回はさらにでの漸近展開が多項式で与えられる場合を考える。
つまり、関数の漸近展開が、
で与えられる場合を考える。そして、この2点での漸近展開を同時に再現する簡単な関数を総和法の一種であるパデ近似を駆使して見つける。以下、それぞれの多項式部分をとおくと約束する。
漸近項の分離
近似する関数をまずは、
と表し、第二項を分子が次多項式で、分母が字多項式のパデ近似で近似する。すると、
ここで、
となるようにパデ近似の次数を選ぶと、での漸近展開は明らかに
となる。また、パデ近似は、での展開を与えられた次数まで再現する近似なので、での漸近展開は、当然
となる。
例
練習として、
の場合をやってみせよう。この関数を特徴づけるパラメータは8個である。つまり、この関数を近似するより簡単な式を見つけたい。
この関数の2点での漸近展開を2次までとるとすると、
となる。まず、それぞれのグラフを見てみよう。
黒線が関数で、青と緑がそれぞれ、における漸近展開を有限次で打ち切った近似である。各漸近展開が、それぞれの展開点から離れるに従って、破綻するのがみてとれるだろう。
まずを
ここで、となるような第二項のパデ近似はである。実際に、Wolfram AlphaやMapleなどを使って計算すると、
となる。このようにして、関数の2点までの漸近展開を2次まで再現する関数を得ることができた。実際にプロットした図を見てみよう。赤色の線が2点パデ近似である。
このように、の両方で大きく破綻することないよい近似を与えていることがわかる。
特異点
さて、今回得た近似はパデ近似を用いているが特異点をたまたま持たない*1。ところが元の関数は特異点を持つ。実際にどうなっているか見てみよう。
このように単純な総和法を用いると、特異点を再現することに失敗する。次回の記事では、特異点を再現する2点パデ近似を紹介する。
【後編】FoxQの観賞用問題1【第12回関西すうがく徒のつどい】
【後編】FoxQの予想の部分的証明(素数で表される場合 )
を自然数としたとき、
……①
を満たす素数と自然数の組を求めよ。ただし、は原始ピタゴラス数の内小さい方の2組とする。twitterの問題も貼っておきます。
[FoxQの鑑賞用問題1(解答は第12回つどい参加者限定です。)]
— FoxQ (@foxq_stm) October 26, 2019
p,qを素数、n,k,a,bを自然数とし、次の式を考える。
p^a+[(2^k)q]^b=n^2……①
p,(2^k)qが原始ピタゴラス数の内の小さい2数のとき、①式を満たす(p,q,k,a,b)の組を全て求めよ。#kansaimath
原始ピタゴラス数の小さい方の2組の内、一方はの倍数なので、
または
である。今回の記事【後編】ではの場合を取り扱う。
原始ピタゴラス数の小さい2数の内、一方は4の倍数なので、またはが成り立つ。そこで、法をとして、①式を書き出すと、
……(1.0)
より、は偶数である。は原始ピタゴラス数の小さい2数であったので、自然数を用いて、
……(1.1)
……(1.2)
となるので、可能なの組み合わせは、
(i)
(ii)
(iii)
まず、(i)は(1.1)式より、
……(1.3)
となるが、これを満たすのは、のみである。
次に、(ii)も(1.1)式より、因数分解の形になっているので、
……(1.4)
となり矛盾。
最後に、(iii)も(1.1)式より、因数分解の形になっているので、
……(1.5)
以上より、(i)(ii)(iii)から、
……(1.6)
が言えた。従って、解くべき方程式は、
……(1.7)
を解く。
まずは、式変形する。
……(2.1)
ここで、より、ととの公約数はの約数であるが、これはと互いに素なので、
……(2.2)
一方、(1.0)式より、は偶数であったので、とおいて最初の式を変形すると、
……(2.3)
ここで、より、ととの公約数はの約数であり、が奇数であることからとは偶数となり、
……(2.4)
ここで、両辺を2乗して、であったことを思い出すと、
……(2.5)
この式を(2.2)式と比較して、
……(2.6)
ここで、とおくと、
……(2.7)
を得る。はこの方程式の解なので、因数分解して、
……(2.8)
ここで、の判別式は、
……(2.9)
なので、(2.8)式は以外の解を持たない。即ち、
……(2.10)
ここで、(2.4)式より、
……(2.11)
よって、求める解は、
前編はこちらへ。
【前編】FoxQの観賞用問題1【第12回関西すうがく徒のつどい】
FoxQの予想の部分的証明(素数で表される場合 )
を自然数としたとき、
……①
を満たす素数と自然数の組を求めよ。twitterの問題も貼っておきます。ただし、は原始ピタゴラス数の内小さい方の2組とする。
[FoxQの鑑賞用問題1(解答は第12回つどい参加者限定です。)]
— FoxQ (@foxq_stm) October 26, 2019
p,qを素数、n,k,a,bを自然数とし、次の式を考える。
p^a+[(2^k)q]^b=n^2……①
p,(2^k)qが原始ピタゴラス数の内の小さい2数のとき、①式を満たす(p,q,k,a,b)の組を全て求めよ。#kansaimath
原始ピタゴラス数の小さい方の2組の内、一方はの倍数なので、
または
である。今回の記事【前編】ではの場合を取り扱う。
のとき、は原始ピタゴラス数であったので、互いに素な奇数を用いて、
……(1.1)
……(1.2)
これより、
……(1.3)
ここで、で、は明らかにでないので、奇素数である。よって、が偶数で、との公約数が2以下であることから、
(i)
(ii)
(iii)
と場合分けできる。
(i)の場合、2つの式の差をとって、
……(1.4)
となるがこれをみたすは存在しないので矛盾。
(ii)の場合、2つの式の差をとって、
……(1.5)
これを満たすは、。
このとき、(ii)式より。従って、①式は、
……(1.6)
となる。
(iii)の場合、2つの式の差をとって、
……(1.7)
これを満たすは、。
このとき、(iii)式より。従って、①式は、
……(1.8)
となる。
を解く。
法をとすると、
……(2.1)
となるので、はの倍数でなければならない。特に、は偶数である。
次に、法をとすると、
……(2.2)
となるので、も偶数である。
よって、自然数を用いて、と置き直すと、
……(2.3)
ここで、とは互いに素なので、は原始ピタゴラス数となっている。従って、互いに素な自然数が存在して、
……(2.4)
……(2.5)
となる。の可能な場合分けは、
(i)
(ii)
(iii)
である。(2.4)式より、法をとすると(i)は
……(2.6)
となり、矛盾。同様に、(2.4)式より、法をとすると、(ii)は
……(2.7)
となり矛盾。(iii)は、の条件より、
……(2.8)
まず、のとき、[s=3,t=2]より、(2.4)式から
……(2.9)
より、。
次にのとき、
……(2.10)
となるので矛盾。以上より、
……(2.11)
の解はのみであることがわかった。
を解く。
まず、法をにとって、
……(3.1)
より、は偶数でなければいけない。
次に、法をにとると、
……(3.2)
また、に対して、それぞれ
……(3.3)
となるので、も偶数である。よって、自然数を用いて、と置き直すと、
……(3.4)
ここで、とは互いに素なので、は原始ピタゴラス数となっている。従って、互いに素な自然数が存在して、
……(3.5)
……(3.6)
これより、可能なの組み合わせは、
(i)
(ii)
である。(i)は(3.5)式より、法とすると、
……(3.7)
となり矛盾。(ii)は、(3.5)式より、
……(3.8)
ここで、より、との公約数がとなるが、これはと互いに素なので、
……(3.9)
……(3.10)
ここで、と仮定すると、(3.9)式より、法をとして、に対して、
……(3.11)
となるので、(3.9)式は法をとして成り立たない。従って、は矛盾。のとき、(3.10)式より、
……(3.12)
以上より、の解は、
……(3.13)
のみであることがわかった。
の場合の求める解
の場合の求める解は、
後編はこちらから。
【第12回関西すうがく徒のつどい】FoxQからの挑戦状1【解答】
FoxQからの挑戦状1
挑戦状シリーズ第一弾です。今回は複数題にわけることで難易度調整してみました。みなさん、問題を楽しんでいただけたでしょうか?楽しんでいただけたなら、とっても嬉しいです。では、問題のおさらいです。
……①
(1)のとき、①式を満たすを全て求めよ。
(2)のとき、①式を満たすを全て求めよ。
(3)のとき、①式を満たすは存在しないことを示せ。
twitterの問題も張り付けておきます。
[FoxQからの挑戦状1(解答は第12回つどい参加者限定です)]
— FoxQ (@foxq_stm) October 26, 2019
p,q,rを素数、kを自然数とし、次の式を考える。
p^2+[(2^k)q]^2=r^2……①
(1)k=1のとき、①式を満たすp,q,rを求めよ。
(2)k=2のとき、①式を満たすp,q,rを求めよ。
(3)k≧3のとき、①式を満たすp,q,rは存在しないことを示せ。#kansaimath
解答
とが互いに素でないとすると、素数なので。また、左辺がで割れるので、となるが、このとき、
……(0.1)
となり、矛盾。また、としても、同様にして矛盾が導かれる。よって、とは互いに素なので、①式のは原始ピタゴラス数となる。従って、互いに素な自然数を用いて、
……(0.2)
……(0.3)
……(0.4)
と表せる。
(1)の解答
のとき、(0.3)式よりなので、が素数であることに注意すると、
……(1.1)
となる。また、(0.2)式より、
……(1.2)
ここで、が素数であるためには、すなわち
……(1.3)
でなくてはいけない。このとき、
……(1.4)
更に、(0.4)式より、
……(1.5)
より、求める答えは
……(1.6)
(2)の解答
のとき、(0.3)式より、なので、
……(2.1)
このとき、(0.2)式より、
……(2.2)
ここで、が素数であるためには、すなわち
……(2.3)
でなくてはいけない。このとき、
……(2.4)
更に、(0.4)式より、
……(2.5)
より、求める解は、
……(2.6)
(3)の解答
のとき、(0.3)式より、なので、互いに素なとして次の3通りの可能性が考えられる。
(i)
(ii)
(iii)
(i)の場合、(0.2)式より、
……(3.1)
は明らかに合成数なので、矛盾。
(ii)の場合、
……(3.2)
より、が素数であるためには、
……(3.3)
……(3.4)
でなければならない。ここで、を法として考えると、(3.3)(3.4)式より、のいずれかはの倍数でなければならない。すなわち、は素数なので、どちらかはとなる。
まず、だった場合、
……(3.5)
となり矛盾。
次に、だった場合、
……(3.6)
となり矛盾。
(iii)の場合、
……(3.7)
より、が素数であるためには、
……(3.8)
……(3.9)
でなければならない。ここで、を法として考えると、(3.8)(3.9)式より、のいずれかはの倍数でなければならない。
まず、だった場合、
……(3.10)
となり矛盾。
次に、だった場合、
……(3.11)
となる。このとき、
……(3.12)
更に、(0.4)式より、
……(3.13)
となり、となるから、が素数でないので矛盾。以上より、題意は示された。