【その2】特異点のある関数の2点漸近展開に対する総和法【多項式型】
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特異点
この記事は前回の2点パデ近似の続きである。今回の記事では特異点の取り扱い方について説明する。
特異点は、もしあれば、関数の振る舞いを大きく特徴づける重要な情報である。そこで、今回は関数が自然数のべきの孤立特異点*1を持つ場合、すなわち、
となる場合を考える。このとき、
は、を除いて特異点を持たないので、
の漸近展開を
と計算する。ここで、パデ近似を適用するために多項式型の因子を引き出して、
とすると、は
以外で、特異点を持たない。
に対する2点パデ近似を
とすると、
の特異点を考慮した2点パデ近似
は、
となる。ここで、は、各特異点での発散のスピード
を再現するように決定する。
詳しくは、拙著、多点総和法入門を読んでいただきたい。
実際の例
それでは、前回の記事で2点パデ近似を適用した関数に対して、
その特異点、
を取り入れた2点パデ近似*2を実際にやってみよう。まず、関数の2点での漸近展開は
ここで、 特異点の因子を除いて
での項を分離すると、
となるので、2点パデ近似はパデ近似を第二項に適用して、
となる。これは、次の漸近展開を持つ。
これを用いて、特異点を取り入れた2点パデ近似は、
となる。この関数は次の漸近展開を持つ。
ここで、注意しなければいけないのは、
となり特異点の振る舞いを完全には取り入れきれないことである。ただ、で係数
に近い値で発散することのみ記述されている。
それでは、特異点を取り入れた2点パデ近似をプロットしたものを見てみよう。