流れる空の中で数学を。

とある数学好きの「手作りすうがく」と「気ままな雑記」。

【高校数学】虚数iと虚数-iが異なることの証明【虚数とは?】

虚数の定義

虚数iは方程式、

x^2+1=0……①

を満たす解の一つとして定義され、虚数と呼ばれている。ところで、この虚数i

i^2=-1

を満たす新しい数として定義される。この方程式の解は1つだけだろうか?それとも2つあるだろうか?

それを調べる第一歩は、①式を因数分解することから始まる。つまり、

(x+i)(x-i)=x^2+(i-i)x-i^2=x^2+1=0

なので、i=-iでなければ、解は2つあることになる。

 

素数2で割った余りと考えてみる

虚数i

i\equiv1(\mod 2)

という数を同一視したものだと試しに定義してみる。つまり、奇数の集まり全体を同一視したものを虚数だと仮に考えてみる。

すると、

-i\equiv -1 \equiv 1 \equiv i

となり、x^2+1=(x-i)^2と重解を持つことになる。

さて、これは正しいのだろうか?

 

背理法

この手の問題を解く強力な数学的手法は背理法だ。つまり、i=-iとして、矛盾を導く。矛盾を導くまでの過程、推論に間違いがなければ、最初の前提が間違っているという寸法だ。

まず、i=-iと仮定する。すると、2i=i+i=i-i=0である。

0=x^2+1=(x+i)(x-i)=(x+i)^2=x^2+2xi+i^2

=x(x+2i)-1=x^2-1

よって、

x^2+1=x^2-1

1=-1

となって矛盾が導ける。

よって、i\neq -iであることがわかり、これがx^2+1の解の全てであることが分かる。

 

法を2としたときのx^2+1\equiv 0の解

さて、法を2として2次方程式を見るとどうなるだろうか?このとき、

1\equiv -1 (\mod 2)

なので、上の議論からは矛盾は導けない。よって、重解x\equiv 1

x^2+1\equiv(x-1)^2=0

 から導ける。

 

法を奇素数pとしたときのx^2+1\equiv 0の解

素数pを法とした2次方程式

 x^2\equiv -1\equiv p-1 (\mod p)

を考える。これは、2乗して、p-1に合同になる数x=1,2,\cdots,p-1は存在するかということになる。これは実は平方剰余の第一法則(ルジャンドル記号 - Wikipedia)として知られており、

p\equiv 1 (\mod 4)のときは解が存在し、p\equiv 3 (\mod 4)のときは解が存在しないことが分かっている。

p\equiv 1 (\mod 4)とたときの解をiと置いてみよう。

すると、x^2+1因数分解から-iも解であることがわかる。

このとき、x^2+1\equiv (x+i)(x-i)が重解を持つなら、i\equiv-iつまり、2i \equiv 0となることがわかる。

2と奇素数pは互いに素なので、2の逆数(逆元)が存在することがわかる(モジュラ逆数 - Wikipedia)。よって、それを2^{-1}とかき、かけると、

2^{-1}2i\equiv 2^{-1}0 \equiv 0

 i \equiv 0

 となるが、これは、x=ix^2+1\equiv 0の解で会った事に矛盾する。

実際、

0\equiv x^2 +1 \equiv 0^2+1\equiv 1 (\mod p)

となり、矛盾。よって、i-iは異なる。

 

結局、虚数は奇素数p=4k+1としたとき世界の数なのか?

これは実数をどう拡張するかによってくる。

例えば、素数p=5を考えるとき、方程式

5x-1\equiv 0 (\mod 5)

は、-1\equiv 0 (\mod 5)となってしまい、解が存在しなくなる。同様にして、

px-1\equiv 0 (\mod p)を考えると、これは解を持たない。

新しい数を導入することで、もともとあった方程式の解の個数が減ってしまってはそんな気がするので、虚数は法をpとした数とはしない方がいいということがわかるだろう。

法をpとした方程式

方程式f(x)=0を法をpとして考えて、

f(x)\equiv 0(\mod p)

としたときの解の個数を考えるのは興味深い問題だ。

実は、整数係数の楕円曲線

y^2=x^3+ax+b

は2変数x,yの3次方程式だが、法をpとしたときの解の個数や解の重複の個数が、フェルマーの最終定理を解くときの鍵になっていたりする。

だから、あながち、法をpとして方程式を考えることも無駄ではないのだ。

というわけで、常に視野は広く持っておこう!!