流れる空の中で数学を。

とある数学好きの「手作りすうがく」と「気ままな雑記」。

【ファルティングスの定理】なぜ楕円曲線は3次なのか?【フェルマーの最終定理】

楕円曲線

BSD予想で、問題になっているのは、2変数有理数係数方程式

y^2=x^3+ax+b

が「どれだけたくさんの有理数解を持つか?」ということである。

さて、ここで自然に生じる疑問がなぜ、yについて2次でxについて3次の方程式だけにそんなに注目しているかということだ。

この疑問に答えてくれるにはまず、代数曲線の種数という概念を抑える必要がある。なお、今回は話の流れだけを抑えることにしょう。

 

種数

簡単のため考えている代数曲線が「特異性」を持たないと仮定する。

このとき、代数曲線の種数gは代数曲線を表す多項式の最高次数の項の次数をdとするとき、

g=\frac{1}{2}(d-1)(d-2)

と表せる(代数曲線 - Wikipedia)。

 

楕円曲線の場合、d=3なので、「特異性」を持たない楕円曲線の種数gは、

g=\frac{1}{2}(3-1)(2-1)=1

となる。

フェルマーの最終定理の場合は、特にd\ge 4の場合、

x^d+y^d=1

有理数解と問題を置き換えられるので、種数は、

g=\frac{1}{2}(d-1)(d-2)\ge 2

となる。

 

ファルティングスの定理

1922年、Mordellは代数曲線の種数がその有理数解の個数に関連しているという予想した。この予想は1983年Gerd Faltingsにより、証明されたので、現在ファルティングスの定理と呼ばれている。

ja.wikipedia.org

まず、種数gが0の場合、(特異性を持たない)代数曲線の有理数解は全く存在しないか無限個である。

次に、種数gが1より大きい場合、(特異性を持たない)代数曲線の有理数解は有限個である。

このことの応用として、フェルマーの最終定理d\ge 4のとき、たかだか有限個の解しか持たないことがすぐに従う。d=3の場合は種数1になるので、このようなことはすぐには言えない。

 

最後に、種数gが1の場合は、楕円曲線に相当し、この場合どれだけ多くの有理数解を持つかは明らかではない。

 

このような種数が1であるという理由から、楕円曲線だけが特別に重要な対象として研究されている。そして、有理数解の個数について、解析学代数学2つの世界からの見方ができるという予想がミレニアム問題の1つであるBSD予想なのだが、話し出すと長くなるので(今は勉強不足なので)、この記事は一旦ここでお開きにします。