【修正版】3が合同数でないことの初等的証明
追記(2018/10/13):(10)式で計算ミスをしており、ではなく、でした。そのため、原始ピタゴラス数の3つ組がとなり、不等式の評価で矛盾を導けなくなってしまいました。いつかうまくいったら、更新します。
前回の失敗から
前回の記事では、3が合同数でないことを初等的に証明しようとしたが、証明に飛躍があり見事に失敗した。(自然数が合同数であるとは、全ての辺の長さが有理数で、面積がの直角三角形が存在することと定義されている。)
sky-time-math.hatenablog.jp
今回の記事では、証明の修正に成功できたと思うので、3が合同数でないことを改めて証明することに挑戦する。
背理法からピタゴラス数へ
前回と同様に、背理法を用いる。復習のため、あえてもう一度書く。
3が合同数であると仮定する。すなわち、ある有理数が存在して、
……(1)
……(2)
と仮定する。*1上式をで割って、
……(3)
……(4)
(4)式を(3)式に代入して、
……(5)
ここで、有理数を
……(7)
……(8)
と表す。ただし、と、とは互いに素であるとする*2。
(5)式に、をかけて、
……(9)
を得る。両辺をで割ると、
……(10)
を得る。ここで、とが互いに素であるためには、がの倍数でなければいけない。すなわち、ある自然数が存在して、
……(11)
と表せる。(10)式の両辺にをかけて整理すると、
……(12)
を得る。
ところで、(12)式より、とが互いに素であるためには、と、とがそれぞれ互いに素でなければいけない。このことと、(11)式より、がの倍数であることがわかるので、結局、
……(14)
……(15)
……(16)
が言える。まずは、このように合同数の問題が、ピタゴラス数の問題へと書き換わる。
ピタゴラス数から原始ピタゴラス数へ
次のステップに進むために、(16)式に現れるがそれぞれ互いに素であること、つまり原始ピタゴラス数になっていることを示す。がと互いに素でないと仮定すると、(16)式より明らかに、とが互いに素でなくなり、矛盾する。よって、
とは互いに素である。
同様に、
とも互いに素である。
次に、(16)式に現れる数『6』の取扱いがポイントとなる。
そこで、と仮定してみると、は2,3,6のいずれかの倍数となる。これに対応して、(16)式より、も2,3,6のいずれかの倍数になる。ところが、(15)式より、がの倍数なので、も2,3,6のいずれかの対応する倍数になる。このことは、とが互いに素であったことに矛盾する。従って、
……(17)
が言えた。さらに、と仮定すると、(16)式より、となり矛盾するので、
……(18)
も従う。以上より、(16)式に現れる
は原始ピタゴラス数である
ことがわかった。
原子ピタゴラス数の表し方
任意の原始ピタゴラス数を表す公式があり、(16)式は、互いに素な奇数を用いて、
……(19)
……(20)
……(21)
と表せる。この公式の導出は、例えば、『はじめての数論(原著第3版)』の定理2.1等に書いてある。また、英語版のwikipediaのPythagorean triple - Wikipediaの2.3にも書いてある。(ちなみに、上記wikiの2の冒頭の公式から(19)~(21)式を導くには、とおけばいい。)
はじめての数論 原著第3版 発見と証明の大航海‐ピタゴラスの定理から楕円曲線まで
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ここで、原子ピタゴラス数の表式から次のステップに進む前に、ある不等式の評価をしておく。
合同数が3の場合に成り立つ不等式
(10)式に相加・相乗平均の式を用いて、次のように不等式を得る。
……(22)
は正の数なので、目的の不等式
……(23)
を得る。これが、今回の証明の鍵となる。
証明の完了へ
(20)式より、
……(24)
また、(15)(19)式より、
……(25)
ところで、(17)式に書いたようにと6は互いに素なので、と表されていることを考慮すると、
……(26)
と表されることがわかる。このことから、が最小になるのは、ある整数によって、が
……(27)
……(28)
と表される場合であることが言える。すなわち、
……(29)
である。これを(25)式にあてはめると、
……(30)
を得る。ところが、(26)式を満たす奇数は、
……(31)
……(32)
以上となる。したがって、(30)式は、
……(31)
となる。ここで、(21)式より
……(21)
であったので、明らかに、
……(32)
が導かれる。ところが、(23)式より、であったので、これは矛盾である。
以上より、一番最初の背理法の仮定が偽であることが言える。すなわち、3は合同数ではないことが証明できた。