流れる空の中で数学を。

とある数学好きの「手作りすうがく」と「気ままな雑記」。

【極限!?】2次方程式の解の公式と1次方程式の解

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今日もどこかで『にーえーぶんの……』


今日も誰かがどこかで、

『にーえーぶんのまいなすびー、ぷらすまいなするーとびーじじょうまいなすよんえーしー』

と呪文のように口ずさむ。聞き覚えのある数学フレーズ、そんな2次方程式の解の公式にまつわる話を今回はしてみよう。


何はともあれ、2次方程式は、
ax^2+bx+c=0
という方程式のことで、a \ne 0の場合のものを指す。
このa \ne 0というのがさり気ない条件に聞こえるが、とっても大切だ。

冒頭で唱えた解の公式
x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}
も、うっかりa=0としてみると、『0で割る』というタブーを冒してしまう。
ここで、1つの疑問が浮かんだ人もいるだろう。そう、

a \rightarrow 0の極限をとったとき、解の公式はどうなる?』

という疑問だ。

ヤフー知恵袋にて

この「解の公式の極限問題」は、やはりというかネットで質問している人がいた。
それが、ヤフー知恵袋における次の質問だ。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp


問題こそ解決ずみになっているが、そのベストアンサーが、私にはなんともスッキリしないものに感じられた。そこで、今回の記事では、この疑問に真正面から立ち向かう。
といっても、ちょっとした計算をするだけれど……


1次方程式へ向かって

a \rightarrow 0の極限をとると、もともとの2次方程式は、
 ax^2+bx+c \rightarrow bx+c=0
となる。ここで、b \ne 0場合を考えることにすると、これは1次方程式になる。
もちろんその解は、
x=- \frac{c}{b}
だ。したがって、2次方程式の解の公式
x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}
a \rightarrow 0の極限をとると、その内1つは-c/bになると期待できる。
ここで、本当に答えるべき質問は、

①2次方程式の解の公式の極限をどうやってとるか?
②2つあった解の内、もう1つはどうなるか?

の2つだろう。しかし、極限をとるにしても、解の公式の分母にaが残ったままではやりづらそうだ。そこで、ちょっと意外なテクニックが使えることに気づいたので紹介したいと思う。それは、いわば、

『分子の有理化』

とでも言えるテクニックである。

「分子の有理化」と「解の公式の極限」

普通学校では、「分母を有理化せよ」と問題に出される。今回は、あえてその逆である「分子」を有理化していく。何が起こるかは、下の計算を少し追ってみてほしい。(以下、複号同順。)一行ずつ丁寧にやっていく。
x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}
 =\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\frac{-b \mp \sqrt{b^2-4ac}}{-b \mp \sqrt{b^2-4ac}}
 =\frac{b^2 - (b^2-4ac)}{2a(-b \mp \sqrt{b^2-4ac})}
 =\frac{4ac}{2a(-b \mp \sqrt{b^2-4ac})}
ここで、なんと、分母と分子の両方aが表れているので「約分」できてしまうのだ。「約分」すると、
x=\frac{2c}{-b \mp \sqrt{b^2-4ac}}
となる。「分母にルートタイプ」の解の公式である。覚えるには、

『にーしーわる、まいなすびー、まいなすぷらするーとびーじじょうよんえーしー』

と唱えればいい。
とにかく、こうなってしまえば、後はa \rightarrow 0の極限をとるだけだ。
x \rightarrow \frac{2c}{(-b \mp \sqrt{b^2})}
 = \frac{2c}{-b \mp |b|}
|b|の絶対値を外すと、+b-bのいずれかなので、結局、解の公式に現れる2つの解の極限は、
x \rightarrow \frac{2c}{-b \pm b}
つまり、
x \rightarrow -\frac{c}{b},\infty
となる。*1
以上のようにして、2次方程式の「解の公式の極限問題」は、「分子の有理化」というちょっと予想外のテクニックによって解決したのであった。

 

え……?

『3次方程式の解の公式の極限がどうなるか』って?

気が向いたらやるかもしれませんし、面倒そうなのでやらないかもしれません。
それでは、また次の更新でお会いしましょう。

*1:ここで、\inftyと書いたのは、c \ne 0のとき、分母が0になると発散するという意味で書いた。c=0の場合は、もちろん「不定」になる。