流れる空の中で数学を。

とある数学好きの「手作りすうがく」と「気ままな雑記」。

BSD予想の研究者になるにはどうすればいいのでしょうか?

BSD予想

バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想 - Wikipediaの主張を精確に理解し、いつか(できれば10年以内に)研究をしたいと思っています。

現状

現在楕円曲線について知っていることを手短に自分でまとめた動画がこちら。

www.youtube.com

僕は物理学(物性理論)の出身で、一応博士号を持っていますが、数学科の大学数学は完全に独学です。

現在は代数学の基礎(群・環・体ガロア理論)の概要を一周勉強し終えて、山本芳彦先生の数論入門を読んでいます。

 

今後の予定

山本先生の本が終わったら、初等整数論講義(高木)を読む予定です。

 

平行して気分転換に、複素関数論と位相空間論、多様体論の勉強もしようと思っています。それぞれ以下の本で勉強予定です。

 

 

 

 

 

次に、雪江整数論123を読む。

 

そして、次の本を読む。

 

 

 

 

その後、読みかけだったElliptic talesにもう一度チャレンジする。

 

その後、定番と言われているシルヴァーマン・テイトの楕円曲線論入門を読む予定です。

 

追記:次の本もよさそうだったので追加。

 

 

 

 

 

足りないものとここから先のルート

ここまでの勉強ルートでこれも読んだ方がいいよというものがあったら教えていただきたいです。

下の2つのツイートが気になっていて、どれがBSD予想の研究に特に必要で、それぞれここに書かれていないお勧めの本などあれば知りたいです。

上の文献紹介で挙げられている本で、僕の勉強ルートに入っていない本があります。それらの本も読んだ方がいいのか、またどのタイミングで読むべきかなど、意見交換したいです。

 

最後に、上のことが全部終わった後どのように勉強していけばいいのかよくわかっていません。読むべき本とか(特に洋書は詳しくないので知りたい)論文とか大学院に行くべきとかなにかアドバイスあればいただきたいです。

 

その他リンク(pdfなど)

楕円曲線と岩澤理論

http://www4.math.sci.osaka-u.ac.jp/~ibukiyam/pdf/%E7%AC%AC%EF%BC%96%E5%9B%9E/6_5.pdf

http://www.sci.u-toyama.ac.jp/~iwao/SS2003/Bin/Reports/matsuno.pdf

楕円曲線と数論幾何

https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~tetsushi/files/Galois_fest_ito_200705.pdf

x^2+y^2≡z^2 (mod p^e)の解の個数

x^2+y^2\equiv z^2 (\mod p)の解の個数

以下の文献によると、

https://math.mit.edu/research/highschool/primes/circle/documents/2020/Shleifer_Su_2020.pdf

この問題の\mod pでの解の個数は、p^2個となる。

この文献を参考に一般化を試みる。

x^2+y^2\equiv z^2 (\mod p^e)の解の個数

以下、上記の参考文献と並行して話を進める。以下、証明は全て完成していなくて、数値実験からの予測を一部含む。

e\ge 2とする。

このとき、

x^2+y^2\equiv 0 (\mod p^e)の解の個数は、

(p^e-1)\left(1+\left(\frac{-1}{p^e}\right)\right)+1

=p^e+(p^e-1)\left(\frac{-1}{p^e}\right)

次に、x^2+y^2\equiv k^2の解の個数は、

\sum_{y=0}^{p^e-1}1+\left(\frac{k^2-y^2}{p^e}\right)

=p^e+\left(\frac{-1}{p^e}\right)\sum_{y'=0}^{p^e-1}\left(\frac{y'}{p^e}\right)\left(\frac{y'+2k}{p^e}\right)

=p^e+\left(\frac{-1}{p^e}\right)\sum_{y'=0}^{p^e-1}\left(\frac{y'}{p^e}\right)\left(\frac{y'+a}{p^e}\right)

ここで、a\not\equiv 0 (\mod p)のとき、数値実験により、

\sum_{y'=0}^{p^e-1}\left(\frac{y'}{p^e}\right)\left(\frac{y'+a}{p^e}\right)=(-1)^ep^{e-1}

また、a\equiv 0 (\mod p)のとき、数値実験により、

\sum_{y'=0}^{p^e-1}\left(\frac{y'}{p^e}\right)\left(\frac{y'+a}{p^e}\right)= \alpha p^{e-1}

ここで、\alphap未満の素数の積でpを超えない*1

追記:山田先生(@tyamada1093)にalpha=p-1になっていることを教えてもらいました。お礼申し上げます。

よって、

\sum_{a=1}^{p^e-1}\sum_{y'=0}^{p^e-1}\left(\frac{y'}{p^e}\right)\left(\frac{y'+a}{p^e}\right)=\left(\frac{-1}{p^e}\right)((p^e-p^{e-1}+1)(-1)^ep^{e-1}+(p^{e-1}-1)\alpha p^{e-1})

後はこれらを全て足し合わせればいい。

\sum_{y=0}^{p^e-1}1+\left(\frac{k^2-y^2}{p^e}\right)

=p^{e}+(p^e-1)\left(\frac{-1}{p^e}\right)+(p^e-1)p^e

+\left(\frac{-1}{p^e}\right)((p^e-p^{e-1})(-1)^ep^{e-1}+(p^{e-1}-1)\alpha p^{e-1})

=p^{2e}+(p^e-1)\left(\frac{-1}{p^e}\right)

+\left(\frac{-1}{p^e}\right)((p^e-p^{e-1})(-1)^ep^{e-1}+(p^{e-1}-1)2p^{e-1})

=p^{2e}+\left(\frac{-1}{p^e}\right)((p^e-1)+(p^e-p^{e-1})(-1)^ep^{e-1}+(p^{e-1}-1)\alpha p^{e-1})

=p^{2e}+\left(\frac{-1}{p^e}\right)((p^e-1)+(p^e-p^{e-1})(-1)^ep^{e-1}+(p^{e-1}-1)\alpha p^{e-1})

\alpha=p-1を代入して整理すると、

=p^{2e}+\left(\frac{-1}{p^e}\right)((1+(-1)^e)p^{2e-1}-(1+(-1)^e)p^{2e-2}+p^{e-1}-1)

nが指数が2乗以上の素因数を持つかの場合分け

x^2+y^2\equiv z^2(\mod n)の解の個数がちょうどn^2になるのは、n素因数分解したとき、素数の1乗の積のみからなる場合だけになる(中国式剰余定理より)。

 

 

 

 

*1:\alphaは2,3,5,6などの値を取ることを確認済みでその振る舞いは複雑に思える。

【証明】p+q=rのとき、√p+√q≡√r(mod n)ならば、n=2qとなること

問題

前回の記事で、予想を立てた。

 

sky-time-math.hatenablog.jp

これをn\gt 2の場合に証明できたので*1、この記事で以下に書く。

n=2qとなることの証明

\sqrt{2}+\sqrt{q}\equiv \sqrt{r}\equiv \sqrt{2+q} (\mod n)

両辺を二乗して、

2+q+2\sqrt{2q}\equiv 2+q (\mod n)

2\sqrt{2q}\equiv 0 (\mod n)

よって、2\sqrt{2q}nの倍数。

また、

x^2\equiv 2 (\mod n)

となるxが存在するので、ヤコビ記号の相互法則(第2補充法則)より、

nは偶数または、n=8k\pm 1と表される*2

(1)n=8k\pm 1の場合、

2\sqrt{2q}\equiv 0 (\mod n)

8q\equiv 0 (\mod n)

となるが、

0 \lt q\lt n \Rightarrow 0 \lt 8q\lt 8n

である。また、ある自然数lが存在して、

8q=ln

8q=l(8k \pm 1)=8kl \pm l

8(q-kl)=\pm l

従って、lは8の倍数である。

ここで、l=8sとおくと、

 8q=8sn\Rightarrow q=sn

となり、q\lt nなので、s=qでなければならず、これよりn=1が得られて、前提に矛盾する。

(2)nが偶数の場合、

n=2mとおくと、

2\sqrt{2q}\equiv 0 (\mod n)

2q\equiv 0 (\mod m)

ここで、q\lt n\Rightarrow 0\lt 2q \lt 2n=4mなので、

2q=m,2m,3mしかありえない。

従って、

q=3,m=2

m=2q

m=q

のいずれかである。①は\sqrt{2}+\sqrt{3}\equiv\sqrt{5} (\mod 2)の場合である。

②のときn=4q、③のとき、n=2qである。

k=1,2として、

y^2\equiv 2 (\mod 2^k q)

y^2-2\equiv 0  (\mod 2^k q)

ある自然数sが存在して、

y^2-2 =2^k q s

ある自然数zが存在して、y=2z

4z^2-2=2^k q s

2z^2-1=2^{k-1} q s

ここで、k=2とすると、

2z^2-2qs=1

となり矛盾。よって、k=1。すなわち、n=2qが示された。

 

p=2,q=3,r=5のとき、n=2のみが解であること

n=6が可能性として残っているので、その場合について触れておく。

x^2\equiv 2 (\mod 6)となる整数xは存在しない。よって、p=2,q=3,r=5の場合の解は、n=2のみである。

 

*1:n=2の場合も取り扱う。

*2:数論入門[山本義彦]p100参照

p+q=rのとき、√p+√q≡√r mod nを満たすnについて

問題

p,q,r\lt n素数とする。p+q=rのとき、\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv \sqrt{r} (\mod n)を満たすnp,q,r\le 300の場合に探索した。

プログラムは過去記事参照のこと、

 

sky-time-math.hatenablog.jp

\sqrt{2}+\sqrt{3}\equiv\sqrt{5} (\mod 2)

\sqrt{2}+\sqrt{17}\equiv\sqrt{19} (\mod 34)

\sqrt{2}+\sqrt{41}\equiv\sqrt{43} (\mod 82)

\sqrt{2}+\sqrt{71}\equiv\sqrt{73} (\mod 142)

\sqrt{2}+\sqrt{137}\equiv\sqrt{139} (\mod 274)

\sqrt{2}+\sqrt{191}\equiv\sqrt{193} (\mod 382)

\sqrt{2}+\sqrt{239}\equiv\sqrt{241} (\mod 478)

\sqrt{2}+\sqrt{281}\equiv\sqrt{283} (\mod 562)

 

予想

p\lt q,r \lt n素数とする。p+q=rのとき、\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv \sqrt{r} (\mod n)を満たすnが存在するための必要条件は、

p=2,n=2q

である。

証明できた方、証明を知っている方がいたら教えていただきたいです。

√p+√q≡√r(mod n)となるようなモジュロ演算

p,q,r素数としたときのルート和

p,q,r素数とする。このとき、

\sqrt{p}は、自然数nを法として、方程式

x^2=p(\mod n)

の解が存在すれば、ちょうど2つ存在する。このとき、\sqrt{p} (\mod n)などと書くことにする。

与えられた素数p,q,rに対して、

\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv\sqrt{r} (\mod n)

を満たすnは存在するかという問題が自然と思いつく。

 

\sqrt{2}+\sqrt{3}\equiv \sqrt{5} (mod n)の場合

これを満たす自然数nは、n\le10^5まで探索したが、n=2以外見つからなかった。そこで、次のことが予想される。

 

\sqrt{2},\sqrt{3},\sqrt{5}(\mod n)1\sim nに存在するとき、

方程式\sqrt{2}+\sqrt{3}\equiv \sqrt{5} (\mod n)は、n=2以外の解を持たない。

 

このことを証明できる方がいたら、または証明を知っている方がいたら、ぜひ教えていただきたいです。

\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv \sqrt{r} (mod n)のその他の場合

p,q,r\le 23かつ 5 \le n \le 50という条件の下で、探索すると、

\sqrt{2}+\sqrt{17}\equiv28+17\equiv 11 \equiv \sqrt{19} (\mod 34)

などの興味深い例が見つかった。つまり、p,q,r\lt nでかつp+q=rのとき、\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv\sqrt{r}(\mod n)が成り立つことがあるのだ。

 

一般化と予想

p,q,r\lt nのとき、\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv\sqrt{r}(\mod n)が成り立つnは高々一通り存在する。

 

p,q,r\lt nでかつp+q=rのとき、\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv\sqrt{r}(\mod n)となるnが存在するような、p,q,rの組は無限に存在する。

 

これらの予想も証明できた方がいたら、または証明を知っている方がいたら教えていただきたい。

 

プログラム

最後にプログラムを貼っておく。

github.com

\sqrt{2}+\sqrt{3}\equiv\sqrt{5} (\mod n)の探索プログラム

gistcf6380eb0e14ea40c0cf2590354c6e54

 

\sqrt{p}+\sqrt{q}\equiv\sqrt{r} (\mod n)の探索プログラム

gist5030365ec757985acb76d8e1b14f0a79

【数学との関わり】臨界現象研究の今後について思うこと【臨界指数至上主義について】

臨界現象とは

臨界現象については、以下の文献で簡潔にまとめられている。

dl.ndl.go.jp

特に、臨界現象とは、

①「物質が相転移を起こす際に様々な熱力学関数が特異性を示す」

②「異なった系での臨界現象が共通の臨界指数を持つという普遍性」

という2点が面白いと言及されている。

 

くりこみ群と臨界指数

モデル計算と組み合わせにより、数値計算で臨界指数を見積もることが可能である。特に、アンダーソン転移では臨界指数が有効数字3~4桁程度まで求められている*1

ここで使われるテクニックは、物理量を有限系で計算して、有限サイズスケーリングと呼ばれるくりこみ群の手法を用いて、臨界指数を見積もることである。

そこで、行われていることは、本質的には、

①臨界点の発見

②物理量の計算

③スケーリング関数(くりこみ群の理論から得られる)へのフィッティング

である。特に、③はフィッティングパラメータに臨界指数を含むので、臨界指数が見積もられるという仕組みである。

 

共形場理論について

僕は共形場理論についてほとんどしらないが、3次元系の場合に臨界現象を対称性で分類して、ハミルトニアンを用いずに(従って、普遍性の説明が可能となる)臨界指数を見積もるテクニックという程度の認識である。実際の、共形場理論が僕が知る以上に豊なものであるのなら、それを知っている人は僕に教えてほしい。

 

臨界現象研究のこれからについて思うこと

①「物質が相転移を起こす際に様々な熱力学関数が特異性を示す」

②「異なった系での臨界現象が共通の臨界指数を持つという普遍性」

が臨界現象の研究における基本的な問題意識として長年この2つの事象を説明することに労力が割かれてきた。

 

ところがおちついて考えてみてほしい。臨界指数とは所詮数のペア(仮に、\mu,\nuと呼ぼう)にすぎない。

数のペア、しかも実数値の組に対して、何か意味があるか考えられるだろうか?

おそらくまず最初に返ってくるのは、臨界指数は臨界現象としてのハミルトニアンの分類を行うための、特徴量の代表系をなしているという返答だろう。

では、ハミルトニアンの分類ができたとしよう。ここで僕は新たに問いたい。

 

なぜ、そのような分類が可能になったのか?

なぜその実数でなければならなかったのか?

普遍的構造の物理現象は臨界指数だけなのか?

 

僕は、これらの質問に立ち向かうことこそが、これからの臨界現象の研究にとって本質的に重要になってくると考えている。

なぜなら、系の対称性ごとに臨界指数を求めるという目的はおおよそ(ゆるく考えれば)達成されたといってもよく、問題は臨界指数の見積もりの精度を上げることではないからである。実際、アンダーソン転移では実数次元*2での臨界現象を考えることができ、臨界指数は連続的に変化する量と言える。

このような状況であるからこそ、臨界指数をある一つの次元で見るのではなく、次元に依存した関数とみなすことが重要だと言える。

そのような状況では、次元をパラメータにもったなんらかの数学的対象物が臨界現象の研究に必要なのは明らかである。

続けよう。

臨界現象の研究と数学

これまで臨界現象の研究は、物理学者主体で行われてきた。ところが、普遍性すなわち「異なるものを同じものとみなす技術」は本来数学が得意とする分野のはずである。

そのため、臨界現象のトポロジー論的な理解が可能なのではないかと想像できる。

他には、臨界指数とζ関数が関係を持つことは、例えば氷上忍先生の研究で明らかになっている。(Localization, Nonlinear σ Model and String Theory | Progress of Theoretical Physics Supplements | Oxford Academic)

そのため、数論と臨界現象の相互理解が可能ではないかと予想される。

どちらも、まだおそらく手つかずの領域ではあるが、本来臨界現象を理解しようとするならば、このような方向性で行くのが正しいように思える。

 

僕の研究について

僕はStatistical Random Walk Summation(SRWS) theory*3 というものをアンダーソン転移(Orthogonalクラス)の場合に構成した。

 

vixra.org

それにいくらかの近似を施すと、局在長の臨界指数\nuが、第一近似で

\nu(d)=\frac{1}{2}+\frac{\zeta(d/2)\zeta(d/2+2)-\zeta(d/2+1)^2}{\zeta(d/2+1)\zeta(d/2+2)}

と表されることを示した。

この式からわかることは、下部臨界次元d=2で臨界指数が発散するのはζ関数が発散するため、すなわち素数が無限に存在することに由来すると説明できる。

逆に、臨界指数からζ関数を理解できる可能性もわずかに見えてくる。物理学と数論の交流というわけだ。

特に、局在長\xiがあたかもヘルムホルツ自由エネルギーのように見なせて、

\xi\simeq \frac{1}{distance}\ln \Phi(a,d/2,|x-y|+1)

と表せることである。ここで、\Phiはζ関数の一般化であるレルヒ超越関数でありdは次元である。この超越関数が統計力学で最も重要な分配関数のアナロジー部分に現れることは驚きである。

このように、ζ関数のある種の一般化が分配関数に対応し、臨界現象を引き起こしていると考えると数学・物理学双方にメリットのあるものの見方であると考えられる。

 

まとめ

従来、臨界現象の研究は

①臨界点での物理量の特異性

②臨界指数の普遍性

の2点に注目が集まり過ぎていた*4

ところが、これからの臨界現象の研究は次のように変わるべきである。

①臨界現象の研究は、臨界指数の(実数)次元依存性に基づいて行われるべきである。

②臨界現象の普遍性に対する数学側からの説明が可能なのではないか?(トポロジーなど)と問うべきだ。

③臨界現象は数論と根本的な部分でつながっているのではないか?と問うべきだ。

これら3つの点をあげてこの記事を終わりにしたい。

【viXra one掲載済み】アンダーソン転移の新理論を発表しました【JPSJへの不満など】

JPSJに投稿した論文が以下の理由でrejectされました

掲載拒否理由は、今回ちゃんと説明してくれたので、(ひどく誤解されてはいるが)まだ前回よりはマシかなというお気持ち。
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Manuscript Number: 70573
Section: Full Papers
Title: A method for studying the Anderson transition in the orthogonal symmetry class employing a random walk expansion, the statistics of asymptotic walks and summation method
Authors: Yoshiki Ueoka
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Editor's comments:

本論文はアンダーソン転移の臨界指数を求める新たな方法として、グリーン関数を経路展開して、それれを適当な近似のもとで数値的に評価し、その振る舞いから局在長および臨界指数を評価したと主張している。ただ、数値結果で、臨界点を与えるWの値が負になっていたり、誤差も大きかったりしている。現在は、臨界指数は高精度で求められており、本論文の精度では、新しい知見が見えてこない。
 また。アンダーソン転移のこれまでの研究を踏まえての本研究の位置付け、適切な論文の引用、次々と導入される近似の正当性、得られた数値計算結果の妥当性に関する考察、式変形や論理の流れのわかりやすさ、といったものが欠如している。
 以上、形式的な面、解析の丁寧さの両方に問題があり、JPSJの掲載にふさわしくない。
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********************************
Manuscript Number: 17894
Section: Letters
Title: zeta-Pad'e SRWS theory with high dimensional approximation
Authors: Yoshiki Ueoka
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Editor's comments:

本投稿論文は、アンダーソン転移の臨界指数に関する理論的な論文である。グリーン関数の経路展開のうちで、主要と思われる項の形を仮定し、その漸近系から局在長を求め、d次元のアンダーソン転移における局在長の臨界指数に対する解析的な表式を得たと主張している。得られた表式自体は無限次元で0.5になり、2 ~6次元で現在知られている臨界指数とそう遠くない値を示しているが、それに至る近似の正当性に関しては、ほとんど触れられていない。数値計算とのずれもそれなりにあり、パデ近似をしており、「この結果が単なる偶然で、アンダーソン転移とは関係ないのではないか」という懸念を排除する議論が不可欠である。

また、アンダーソン局在のこれまでの研究における本研究の位置付け、記号の定義や物理的意味、適切な文献の引用、所属の書き方、論理の流れを明確にする説明といったものが明らかに不足している

full paperで投稿された論文(こちらは展開を数値的に活用して臨界指数をもとめている)と、基本的な思想は共通しており、まとめることも考えられるが
いずれにしても、導入された近似の正当性を示すことが不可欠である。
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1つ目の論文で伝えたかったことと不満

まず、僕の新理論による臨界指数の精度問題であるが、これは全く持って見当違いのいちゃもんである。以下の文である。

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ただ、数値結果で、臨界点を与えるWの値が負になっていたり、誤差も大きかったりしている。現在は、臨界指数は高精度で求められており、本論文の精度では、新しい知見が見えてこない。

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なぜなら、僕は新理論のたたき台を出すことを目的としており、臨界現象の本質的な理解の進展を目的としているからだ。つまり、臨界指数を求めることは目的ではなく、手段にすぎない。そのため、臨界指数は結論ではなく、理論の正当性を評価するためのものさしに(いったん)なりさがっているのだ。

 

次の指摘について、

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 また。アンダーソン転移のこれまでの研究を踏まえての本研究の位置付け、適切な論文の引用、次々と導入される近似の正当性、得られた数値計算結果の妥当性に関する考察、式変形や論理の流れのわかりやすさ、といったものが欠如している。
********************************

位置づけや論文の引用は、独立研究者であるため、過去に引用した文献の内、内容を覚えているものしか引用できなかったのだ。これは金銭的な問題である。また、近似の正当性や計算結果の妥当性については、上に書いた通り、臨界指数が先行研究とほぼコンシステントになっていることで説明がついているというスタンスなので、議論が逆なのである。

 

2つ目の論文で伝えたかったことと不満

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得られた表式自体は無限次元で0.5になり、2 ~6次元で現在知られている臨界指数とそう遠くない値を示しているが、それに至る近似の正当性に関しては、ほとんど触れられていない。

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何度も言うが臨界指数の高精度計算の時代は一度終わりにして、次のステップに進むべきである。そのため、臨界指数の値は、おおよそあっていれば問題ないのである。

 

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数値計算とのずれもそれなりにあり、パデ近似をしており、「この結果が単なる偶然で、アンダーソン転移とは関係ないのではないか」という懸念を排除する議論が不可欠である。

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パデ近似をすることで、臨界指数の評価に不安が残るなら、なぜボレル・パデ解析を用いた僕の以前の論文を掲載許可したのかと問いただしたい。


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また、アンダーソン局在のこれまでの研究における本研究の位置付け、記号の定義や物理的意味、適切な文献の引用、所属の書き方、論理の流れを明確にする説明といったものが明らかに不足している

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お金の問題により、避けがたいことをいわれても……

所属の書き方なんてのは特にひどい。僕は独立研究者なので、independent以外書きようがないではないか。一体どう直せと?

 

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いずれにしても、導入された近似の正当性を示すことが不可欠である。

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臨界指数の先行研究との比較で正当性は既に示している。これは、従来型の研究では認められないことだ。しかし、臨界現象の新しい知見を得るにあたっては、ここの論理は逆に用いてもよいということに気付いてほしい。

 

viXraにあげた論文

うつ病で集中力の続かない中、苦労してなんとか論文の形にもっていったもの二本である。ここにリンクを貼っておく。

vixra.org

vixra.org

 

最後にいいたいこと

臨界現象の研究が臨界指数を求めて終わりなら、そんなにつまらないことはない。その値にどのような数学的物理学的意味付けができるかは最低限必要である。

また、臨界指数の高精度計算の時代はもう終わりにしていいと思う。アンダーソン転移では、有効数字4桁程度までの精度で数値計算されており、これ以上は無用の長物である。

これからの臨界現象の研究に必要なことは、臨界指数のその先にあるものを見出すことである。

 

この点においては、僕の研究では臨界指数とリーマンのζ関数を関連付けることで、数論的意味を見出すことに成功している。また、統計力学の分配関数のアナロジーとしても、アンダーソン転移(Orthogonalクラス)ではレルヒ超越関数が対応するという綺麗な結果を得ている。

 

これが、ただ臨界指数の数値を精度よく求めるだけの研究より一歩先に踏み出しているのは明らかである。

一本目の論文は、理論構築のたたき台兼先行研究との比較による正当性の確認。

二本目の論文は、新理論がもたらす新しい知見と今後の方向性を説明している。

 

これが理解されないようでは、臨界現象の研究も所詮臨界指数止まりである。後は歴史が解決してくれるか本当に物事の本質を見極める力のある人が現れるのを願うばかりである。