流れる空の中で数学を。

とある数学好きの「手作りすうがく」と「気ままな雑記」。

FoxQの予想の部分的証明([tex:s=2p^2,t=q^2]で[tex:p,q]が互いに素な奇素数の場合 )

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原始ピタゴラス

原始ピタゴラス数は、互いに素な自然数s,tで、偶奇が異なるものを用いて、

C=s^2+t^2,B=2st,A=s^2-t^2……(1.1)

で全て表される。今回は、s=2p^2,t=q^2,p,qは互いに素な奇素数と表されるとき、何が言えるか検証してみたので、成果を報告する。

法を4としたとき

FoxQの予想は次のものである。

A^a+B^bが平方数n^2*1になる自然数(a,b)の組は、(A,B)=(9,40)の場合を除いて高々2通りである。今回は、この予想の証明を部分的な場合について行う。

まず、

A=s^2-t-2=4p^4-q^2……(2.1)
B=2st=(2pq)^2……(2.2)

である。

n^2 \equiv (-1)^a \; (\bmod 4)
\Rightarrow aは偶数……(2.3)

が言えるので、

a=2m(m \ge 1)……(2.4)

とおく。また、

B=2\times2p^2q^2=(2pq)^2は平方数……(2.5)

である。

原子ピタゴラス数から原子ピタゴラス数へ

A^a+B^b=(A^m)^2+[(2pq)^b]^2=n^2……(3.1)

なので、A^m,(2pq)^b,nは再びピタゴラス数になっている。ここで、Wolfram Alphaによると、

\gcd(A,2pq)=1

である。*2つまり、A^m,(2pq)^bは互いに素なので、A^m,(2pq)^b,nは再び原始ピタゴラス数になっている。よって、ある偶奇の異なって互いに素な自然数の組(\alpha,\beta)が存在して、

A^m=\alpha^2-\beta^2……(3.3)
(2pq)^b=2\alpha \beta……(3.4)
n=\alpha^2+\beta^2……(3.5)

と表せる。 (3.4)より、可能な(\alpha,\beta)の組は

\alpha=2^{b-1}p^b,\beta=q^b
\alpha=2^{b-1}q^b,\beta=p^b
\alpha=p^b,\beta=2^{b-1}q^b
\alpha=q^b,\beta=2^{b-1}p^b
\alpha=2^{b-1}p^bq^b,\beta=1

の5通りである。

③の場合

法を8として、pが奇数なので

4p^4-1\equiv 3……(4.1)
p^{2b} \equiv 1……(4.2)
2^{2b-2}\equiv 1,4,0……(4.3)

が成り立つ。特に、b\ge 32^{2b-2}\equiv 0である。そこで、(4.3)の3通りの場合を括弧()で表すことにすると

3\equiv A^m=p^{2b}-2^{2b-2}q^{2b}\equiv1-(1,4,0)\equiv(0,5,1)……(4.4)

より矛盾。

④の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=q^{2b}-2^{2b-2}p^{2b}\equiv1-(1,4,0)\equiv(0,5,1)……(5.1)

より矛盾。

②の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=2^{2b-2}q^{2b}-p^{2b}\equiv(1,4,0)-1\equiv(1,3,7)……(6.1)

よって、b=2である。このとき、(2.1)(3.3)式より、

A^m=(4p^4-q^4)^m=4q^4-p^4……(6.2)

m=1は明らかに不適。m \ge 2とすると、

A^m\ge (4p^4-q^4)^2=16q^8-8p^4q^4+q^8 \gt q^8……(6.3)

 従って、(6.3)式より、q\ge 3なので、

A^m \gt q^8 \gt 4q^4 \gt 4q^4-p^4……(6.4)

となり矛盾。

⑤の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=2^{2b-2}p^{2b}q^{2b}-1\equiv(1,4,0)-1\equiv(1,3,7)……(7.1)

 よって、b=2である。このとき、(2.1)(3.3)式より、

A^m=(4p^4-q^4)^m=4p^4q^4-1……(7.2)

m=1は明らかに不適。m\ge 2とすると

A^m\ge (4p^4-q^4)^2=16p^8-8p^4q^4+q^8 \gt 16p^8+q^8……(7.3)

また、A\gt 0より、

4p^4\gt q^4……(7.4)

 従って、(7.3)(7.4)式より、

A^m \gt 16p^8+q^8 \gt 4p^4q^4+q^8 \gt 4p^4 q^4 \gt 4p^4q^4-1……(7.5)

となり矛盾。 

①の場合

法を8として、③の場合と同様にして、

3\equiv A^m=2^{2b-2}p^{2b}-q^{2b}\equiv(1,4,0)-1\equiv(1,3,7)……(8.1)

 よって、b=2である。このとき、(2.1)(3.3)式より、

A^m=(4p^4-q^4)^m=4p^4-1……(8.2)

よって、

m=1……(8.3)

のとき明らかに成立。よって、m=1は求める解の1つである。m \ge 2とすると、

A^m\ge (4p^4-q^4)^2=16p^8-8p^4q^4+q^8 \gt 16p^8+q^8……(8.4)

 従って、(8.4)式より、q\ge 3なので、

A^m \gt 16p^8+q^8 \gt q^8 \gt 4q^4 \gt 4p^4-q^4……(8.5)

となり矛盾。 

求まった解

以上より、互いに素で偶奇が異なるs=2p^2,t=q^2から生成される原子ピタゴラスA,Bに対して、

A^a+B^bが平方数n^2になる自然数(a,b)の組は、(2.4)(8.3)式より、

(a,b)=(2,2)のみである。

今回も解は(a,b)=(2,2)のみとなったので、次回は(a,b)=(2,2)以外に解の出てくる場合を調べたいと思います。

*1:nは明らかに奇数である。

*2:ユークリッドの互除法がうまくできませんでした。やり方をわかった方がいたらどうか教えてください。